テーマ: 「戸田建設のフロントローディングにおけるマネジメントの実践とその事例報告」

     ・・・ 松岡 和樹 (戸田建設株式会社)

 

フロントローディングとは、「業務の初期工程(フロント)に負荷をかけ(ローディング)、作業を前倒しで進めること」を意味します。

 

ゼネコンにおけるフロントローディングには、下記のような狙いがあります。

1.課題を早期に洗い出して、解決し、手戻りを防ぐ

2.企業や組織の枠を超え、プロジェクト関係者が協業する

3.業務フローや役割分担の意識改革を行う

4.BIM (Building Information Modeling) を道具として活用する

 

戸田建設では、フロントローディングを社内で根付かせるため、社内の組織構築とマネジメント教育の実施を行っています。

その概要をご紹介いたします。また、後半には某大型アリーナの BIM 導入事例もご紹介いたします。

 

2D 図面(既知)から、いきなり BIM モデル(未知)にしようとするとうまくいかないため、

まず、① 2D 図面で整合性がとれていなかったもののマネジメント課題を振り返り、

次に、② BIM の操作を習得し、

最終的に、③ BIM を使ってプロジェクトをマネジメントする、

という段階を経ています。

 

フロントローディングには、「生産性の向上(マネジメントに集中)」と「効率化(スピードアップ)」の 2 つが求められています。BIM を使うことで効率的に、複雑で全容が見えづらい課題を見える化し、フロントで深く思考し解決を図ることで、生産性の向上につなげます。

 

課題には鮮度があるという考え方が必要です。そのため設計段階では基本設計に注力し、設計変更が起こる中で、BIM モデルでシミュレーションして合意しておくことが、後の施工性の向上やコスト削減、リスク回避につながるのです。

 

ぜひ多様な分野の皆さまの知見を持ち寄り、共に考える場となるよう期待してます。

参加される方々との有意義な議論ができれば幸いです。

 


<事前配布資料>

ダウンロード
「76回P2Mクラブ-12/10」<事前配布資料:暫定版> by松岡さん
「戸田建設のフロントローディングにおけるマネジメントの 実践とその事例報告」by
PDFファイル 3.6 MB

講話・議論概要                                            文責:岩下


<松岡さん講話>

 

戸田建設の松岡と申します。

戸田建設の紹介を簡単にします。

当社はいわゆるゼネコンで、建築と土木を主軸に、都市開発や不動産事業にも取り組んでいます。最近では再生可能エネルギー分野にも事業を広げています。

 

戸田建設は、2031年に創業150周年を迎える、非常に歴史の長い会社です。関東大震災からの復興を契機に事業を拡大し、戦後は高度経済成長の波に乗って成長してきました。その後は環境先進企業としての取り組みを進めてきています。

2010年以降は、「喜びを実現する企業グループ」を掲げ、顧客や社会に価値を提供することを目的に事業活動を行っています。

 

最近の事例としては、SAGAアリーナに続き、長崎でジャパネットさんが整備された「長崎スタジアムパーク」があります。当社は、その中のアリーナ建設を引き続き担当させていただきました。

土木分野については、PC(プレキャストコンクリート)構造の活用が進んでおり、比較的デジタル化・工業化が進展している分野です。

 

また、再生可能エネルギーでは、長崎で洋上風力発電事業にも取り組んでいます。

これは、建設業が現在抱えている課題を挙げさせていただきます。

建設業には主に三つの課題があると言われています。

 

一つ目は、生産性の向上です。

建設業は、作業がきつく手間や手戻りも多いため、生産性の向上が急務となっています。

建設業の生産性の向上を図るには、設計上、施工上の課題を早期に解決し、手戻りのない産業へと変えていかなければなりません。そのため、現在はBIMの活用やデジタル技術の活用が必要になってきています。これが「生産性の向上」です。

 

生産性の向上というのは、やり方そのものを変えることを含んでいます。その点で、下に示している「業務の効率化」とは少し異なります。

業務の効率化は、これまでのやり方をそのままに、スピードを上げる取り組みです。そのため、KPIといった数値目標の設定が必要になります。単なるデジタル化にとどまると、この「業務の効率化」、つまりスピードアップの話に収まってしまいます。

 

もう一つはヒューマン面の課題です。各部門間の連携が十分に取れていない状況を解消しないと、先ほど述べた生産性の向上にはなかなか進めません。そのため、プロジェクトマネジメントが必要となります。

 

次に、本日ご紹介する案件はSAGAアリーナです。幸いにも、SAGAアリーナは今年、建設業界のBCS賞を受賞することができました。また、建設業界の団体である日建連がまとめた『施工BIMのスタイル』という書籍にも、このSAGAアリーナが掲載されています。

 

一般的に、BIMは「道具」としては使われているものの、なかなかマネジメントにまで紐づいていない、という共通の課題があります。

これは6年前にもお話ししましたが、業務フローを縦軸に「マネジメント」を置いて考えたとき、手前にあるのが「既知」の領域です。今やっている業務です。そこから外側に行くほど「未知」の領域になり、これを四象限で捉えることができます。

 

従来は、二次元の図面の中で、自分の部署だけを対象にマネジメントすれば十分でした。しかし、BIMを活用しようとすると、部門間連携をしなければ成立しない、非常に難易度の高いツールになります。

その結果、業務フローも未知の領域に踏み込むことになり、部門間連携は避けて通れません。さらにマネジメント、つまり「人」の動かし方や仕事の進め方そのものも変えなければならない。斜め上の次元に移行するというのは、かなり難しい挑戦だと考えています。

 

そこで当社では、あえて手順を選んで進めています。まずはP2M、つまりプロジェクトマネジメントを用いて部門間連携を進めること。加えて、現在の業務を可視化し、新しい業務フローを設計していくために、マネジメントの考え方を徹底的に強化しています。

 

次に、新しい業務フローの中でBIMを活用していく必要があるため、BIMのオペレーション教育も並行して実施しています。これらを踏まえたうえで、BIMを活用した「斜め上のマネジメント」、いわゆるフロントローディングの実現を目指しています。

 

これは、かつての弊社の状況を説明したものです。

ゼネコンの典型的な「縦割り構造」を表しています。

一番上にあるのが「プロジェクト全体工程」です。建設業の場合、これは営業部門が顧客と合意した工程で、営業的な観点から作成された工程表になります。

 

その後、仕事が社内に降りてきて、設計部門は「設計工程」を作成します。

設計工程には、基本設計工程や実施設計工程がありますが、建築の場合、意匠・構造・設備の三分野に分かれています。ところが、それぞれの詳細な工程表までは、なかなか作成されないのが実情です。

 

さらに、工事が始まる段階になると、今度は「工事工程」が作られます。

これは工事部門専用の工程で、ゼネコンの場合、建築工事中心の記載になり、設備工事についてはほとんど反映されていないケースもあります。

 

加えて、施工に向けては「施工図工程」、いわゆる生産設計工程が存在します。生産設計部門が作成する工程ですが、これもまた独立して存在しています。

結果として、これらの工程は基本的にバラバラで、相互の整合が取れていないまま、ゼネコンのプロジェクトは長年進められてきました。

 

そのため、設計面・施工面の両方を横断してマネジメントを行うには、PMO、つまりプロジェクトマネジメント部門が機能しなければ、会社として立ち行かなくなる、という状況となります。

また、近年の建設業界では、設計図と施工図・先行発注の工程のラップはすでに一般的になっています。

以前は、設計工程が完了してから工事工程へと、より直線的につながる形でしたが、現在は設計施工一括(デザインビルド)案件が増加しているため、設計と工事が並行して進む構造になっています。これが現在の実態です。

 

当然ですが、お金の話は超概算から始まります。

そして、基本設計が終わった段階で、コストの約85%は決まる、ほぼ確定すると言われています。

そのため、基本設計は非常に重要になります。

その後、実施設計に入り、契約を経て工事着工が始まります。

工事段階では、建物で言えば鉄骨の建方、PC工法であればPCの建方があります。

続いて、設備工事、電気工事へと進行していきます。

 

ここで基本設計の話となりますが、かつては基本設計は「坪単価」でコストの把握を進めていた時代もありましたが、現在は坪単価ではなく、できるだけ積み上げ方式を行った、いわゆる精概算を行う必要があります。

 

基本設計の段階でコストの約85%が決まってしまうため、

この段階でもかなり詳細な積み上げによる概算精度が求められます。

次に実施設計に入ると、契約に向けたフェーズになります。

基本設計でほぼ決まった85%のコストから大きく乖離しないよう、

コストコントロールを行いながら実施設計を進めなければなりません。

 

この段階ではすでに、建物で言えば杭の発注や鉄骨の発注が同時並行で始まります。

そのため、本契約前であっても、施主から内示をもらい、

資材や工事の発注が実質的に重なって進んでいくことになります。

これは、ゼネコンにとって非常に大きなリスクとなるのです。

 

次は、事例紹介です。

SAGAアリーナについても、基本的には同じような状況だったと言えます。

お客さまと契約を結び、工事に着手するわけですが、この工事着工の段階では当然ながらコストを合わせなければなりません。そのため、工事が始まってからも引き続きVEを行う必要があります。

 

この時期は、生産設計が最も施工図を書いているフェーズです。したがって、この段階でできるだけ負荷を減らす工夫が求められます。本来であれば、実施設計の段階でフロントローディングをもっと大きくしておかないと、生産設計が疲弊してしまう、という問題があるということです。

 

これはCMガイドブックにも一部記載している内容ですが、現在の建設業では、まずプロジェクトの実施方式を決めることが重要になっています。

これまで主流だったのは、①設計施工分離方式です。私の親の世代では、これが当たり前でした。設計は設計事務所が行い、施工はゼネコンが担当する。設計者と施工者が別の主体として、バトンリレーのように業務を引き継いでいく方式です。

 

しかし現在は、②③設計施工一括方式、いわゆるデザインビルド方式が増えてきています。全体の半分以上がデザインビルドになってきているのが実情です。この方式には二つのパターンがあります。一つは、②基本設計の段階からゼネコンが設計を担う設計施工一括案件。もう一つは、③基本設計は設計事務所が行い、実施設計からゼネコンが担当する案件です。

 

さらに、④ECI方式(Early Contractor Involvement)があります。国立競技場の案件で使われたことで知られる方式です。これは、基本設計・実施設計までは設計事務所が行いますが、技術的なフォローを目的として、施工者であるゼネコンが早期にアドバイザリーとして参画します。そして条件が整えば、そのまま工事を担当するという仕組みです。

 

最後に、⑤PFI方式、いわゆるコンセッション方式があります。

このように、ここ15年ほどの間で、これら5つのプロジェクト実施方式が急速に増えてきました。

その背景には「品確法」というものがあります。これは建設業法の中に位置づけられている法律です。

 

品確法は、2005年に制定されました。当時はデフレの時代で、公共事業は価格重視、いわゆる最低価格落札方式が主流でした。その結果、ダンピングや手抜き工事、施工ミスなど、さまざまな弊害が発生していた時代です。こうした状況を背景に、2005年に品確法が制定されたのです。

 

その後、2011年に東日本大震災が発生しました。このときは、価格よりも「多少高額でも一刻も早く復旧・復興を進めるべきだ」という方向へ、国の方針が大きく転換しました。これを受けて、2014年に「改正品確法」が成立します。これは、2005年の品確法をさらに発展・バージョンアップさせたものです。

 

とにかく国の復興を最優先で進めなければならない、という状況の中で、改正品確法には「多様な発注形態」が盛り込まれました。具体的には、5つの発注パターンを認めるという内容です。

これにより、従来の「設計施工分離方式」だけでなく、ゼネコンが設計と施工を一体で担うことも可能になりました。こうして、フロントローディングの重要性が、ますます高まってきたという背景があります。

 

①設計・施工分離方式の場合です。

この方式では、社内の動きを見ると、設計を担当する部門と、施工段階で対応する工程系の部門が、それぞれ分かれて動く形になります。表にすると、このような動きになります。

 

次に、②③設計一括方式の場合です。

基本設計から一括して進めるため、当然ながら基本設計の段階から、社内の各部門が関与して動いていくことになります。

さらに、自社設計、いわゆるデザインビルド方式の場合は、設計の初期段階から各部門が主体的に動かざるを得ません。

  

PFI方式の場合はさらに異なります。

事業計画の段階からプロジェクトが始まるため、最も川上にあたる企画段階、基本計画の段階からゼネコンが関与していく形になります。

 

このように、プロジェクトの実施方式によって、ゼネコン社内の関与部門や動き方は大きく変わります。

そのため、こうした違いを踏まえた教育を、今後ゼネコンの社内で行っていかないと、業務を円滑に回すことは難しい、という課題があります。

  

SAGAアリーナなどの概要に入っていきたいと思います。

これは、先ほどご紹介したフロントローディングを活用した事例です。先ほどBCS賞を受賞させていただいた「佐賀アリーナ」について、その概要をご説明します。

まずは概要をビデオでご紹介しますので、皆さんご覧ください。およそ3分ほどです。

 

(ビデオ上映)

 

こちらがSAGAアリーナの工程表です。

当初の工程では、2020年3月19日に着工し、2022年10月初めに完成・引き渡し予定でした。

本プロジェクトは設計施工分離方式です。設計事務所が設計を担当し、私たちゼネコンが施工を請け負う、いわゆる分離発注方式になります。先ほどご説明したプロジェクト実施方式の中で、黄色でマーカーした「設計施工分離方式」に該当します。

いくつかの理由により、結果として2か月の遅れが生じました。この点については、後ほど詳しくご説明します。

 

これは、マネジメントを振り返って整理したものです。

私たちは施工を担うゼネコンですが、一口にマネジメントと言っても、立場によってさまざまな形があります。

まず「CM(コンストラクション・マネジメント)」があります。

これは発注者側の立場で、施工発注や設計に対してアドバイザリーを行うマネジメントです。発注者の代理、あるいは補佐的な役割を担う立場と言えるでしょう。

CMの役割としては、設計者の選定や、私たちゼネコンのような施工者の選定も行います。つまり、発注者に代わって設計者や施工者を決定する権限と責任を持つマネジメントです。

 

次に設計のマネジメントです。

これは従来の設計事務所が担ってきた役割で、基本設計や実施設計をまとめ上げることが中心となります。工事段階に入ると、工事監理という業務も発生します。

 

そして施工のマネジメントです。

今回は官庁工事で、佐賀県の案件になります。入札を経て受注し、工事を着工します。その中で私たちが担うのが、工事管理というマネジメントです。

 

今回の発表では、この工事管理における課題解決に対して、BIMを活用した事例、特にフロントローディングの取り組みについてご説明したいと考えています。

 

これはSAGAアリーナの件です。 

SAGAアリーナについて概要を説明します。

この配置図で見ると、ハッチングがかかっている部分がアリーナです。中央にあるのがプール、いわゆる「アクアという施設」になります。また、既存の陸上競技場を改修し、きれいに整備しています。

 

この一帯はBリーグ対応のバスケットボールアリーナとして使用されています。

ここが、日鉄エンジニアリングが鉄骨工事を担当したメインアリーナです。

左斜め上、約45度に折れ曲がっている部分がサブアリーナで、そこにつながる小さな三角形の部分がエントランスになります。全体として、実はかなり複雑な形状をしています。

 

図面で立面を見ると、このような形です。

多面体構成になっており、外壁は非常に複雑です。イメージとしては、三角形の集合体のような建物です。

この複雑な形状を、どのようにゼネコンが実際の建築物として作り上げていくのか。

そこがフロントローディングにおける大きな課題でした。

 

図面だけを詰めて見ても、全体像はなかなか分かりません。

これをBIMにすると、このような形になります。すると、「こういう構造なのか」と直感的に理解できます。

 

上部は、屋根部分を取り外し、鉄骨を見せたBIMモデルです。

さらに外壁を剥ぐと、内部に網目状の鉄骨が非常に多く組み込まれている建物であることがよく分かります。

これは、外装のみを抜き出したモデルです。

 

こちらがサブアリーナです。

工事については、当初やや着手が遅れましたが、2020年2月に当社が入札し、3月の中旬から工事が着工しました。

 

この図では、一番上のピンク色の帯がフロントローディング期間を示しています。

このフロントローディング期間があり、その下に緑色の「製作図作成」が続き、さらに黄色の「施工計画」が間に合う形になります。その後に、オレンジ色や青色で示したデジタル活用のフェーズが続きます。これについては後ほど説明します。

 

こちらは、サブアリーナの鉄骨における分離発注の流れを示しています。

最初の2020年3月中旬から7月中旬までは、BIMモデルを作成し、設計上・施工上の課題解決を行いました。

 

この規模の巨大建築物は、一社だけでは対応が難しく、鉄骨量は約1万1,000トンあります。

そのため分離発注を行う必要があり、BIMモデルを分割して各社に発注しています。

 

最初に、「Sファブ」と記載している部分は、日鉄エンジニアリング社で、6,000トン強を発注しています。

それ以外については、Hファブと呼ばれる、やや規模は小さいものの大手のM社、G社などに発注しています。

これはメインアリーナ分です。

 

サブアリーナについても同様で、ゼネコン側が製作図を支給しています。

要するに、Hファブ会社では、このような複雑な形状までBIMで作成することができないため、当社の部署が鉄骨製作図のモデリングを行い、Hファブ各社に図面を支給しています。同様に、他のファブ会社にも発注しているという形です。

 

こちらはWBSで、メインアリーナとサブアリーナについて、どの会社に何トンを担当してもらうかを整理したものです。

日鉄の関係者の方には懐かしく感じられると思いますが、これは立体的な構造についての説明です。

 

SAGA アリーナの構造は、多面体のボリューム造形が印象的な建物となっており、大屋根架構は佐賀錦のひし形模様から着想を得たX 型トラス架構を採用、外周の組柱1本から2本の平行弦トラスを持ち出した架構形式で、トラスを中央でクロスさせることで鉛直剛性を確保しトラス背高を抑えた形となっています。屋根のトラス部と側面の多面体形状を構成する多面体鉄骨耐震ウォールで全体を構成しており、多面体の造形と構造の整合性が高く、建物高さを抑えてアリーナの大きなボリュームからくる威圧感を抑えています。また、この組み柱と加工部分については、主に日鉄さんが中心となって担当してくださいました。

 

非常に複雑な構造のため、図面だけでは把握が難しく、そこで3Dプリンターを用いて模型を作成しました。すると、このような立体形状になります。

 

3Dプリンターで見ると、色が変わっている一つ一つの部分が、それぞれ異なる製作単位を示しています。一社が受注していたとしても、一つの工場だけでは対応できず、部位ごとに工場を分け、さらに複数の工場へ発注しています。そのため、同一メーカー内であっても、色分けされたように複数の工場が関与しています。

 

このような色分けされた立体構造を正確に理解するには、3Dプリンターによる形状確認が不可欠でした。

断面を見ると、スタンド部分があり、そこに先ほど説明した複雑な組み柱とトラス部分が組み合わされています。さらに、外殻と呼ばれる外側の三角形状の鉄骨が加わり、全体の構造が構成されています。

 

これは、フロントローディング計画書の一部です。

施工のフロントローディングに向けた課題解決のための会議を、リアルとZoomを併用して行いました。

 

当時はすでにコロナが発生しており、マスクを着用したうえでの対面打ち合わせも実施していました。Zoomというツールも、まだ「Zoomって何だろう」という状況でしたが、リアルとオンラインの両方を使いながら、フロントローディングの打ち合わせを進めました。

 

次の資料は、単なる打ち合わせの様子ではなく、それと並行してBIMモデルをどのように作成していくかを示したものです。下の方にキュービックな図がありますが、これはプログラムを使って、どこまでモデル化し、どのような手順で作っていくかを整理したものです。

このような形で、複数のBIMモデルを作成する各業者に分離発注を行い、それらを統合するという進め方をとりました。

 

こちらは体制表です。

私たちはゼネコンであるため、所長を中心に、各協力会社や社内の各部門が連携し、設計事務所との打ち合わせを行う体制を構築しました。

 

ここから工程の話になります。

コロナ禍の影響で、当初は2022年10月から12月へと工程が延びるという話をしたと思いますが、その理由はここに記載している通りです。

 

まず、着工と同時にコロナが発生しました。命に関わる問題であり、工事をどう進めるのかという点が大きな課題となりました。屋外作業で三密にはなりにくいとはいえ、慎重な対応が求められました。

 

さらに、地中障害が発生しました。実際に掘ってみると、想定していなかった昔の建物の杭などが残っており、これでは当初の正常な工程には乗らないと判断しました。そのため、地中障害を理由として工程延長をお願いすることになりました。

 

加えて、佐賀県特有の軟弱地盤の問題があります。想定以上に土が柔らかく、セメントを混ぜた地盤改良を行いながら工事を進める必要がありました。これも工程延長の要因となりました。

以上の理由から、約2か月の工程延長を行い、建築工事の進行は2022年12月末までとなりました。

 

これは、工事を進めるにあたって、さまざまな会社が関わるという話です。建設会社だけでなく、他のゼネコンも多数参加していました。例えば、プール(アクア施設)を造るのは別のゼネコンですし、ペデストリアンデッキや道路などの土木工事もありました。

 

このように、一つの敷地内で複数の会社が同時に作業を行う場合、敷地の区画整理や重機の動線調整など、重機同士が交錯する場面を安全に管理する必要があります。そのため、関係各社が参加する連絡会議を設けることが不可欠でした。

 

また、地域貢献の一環として、地元の親子を対象にした見学会も開催しました。

コロナ禍という状況の中で、多くの会社と円滑に工事を進めるため、統括管理業務を弊社が担い、全体を取りまとめる役割を担うことになりました。

 

これは、一つの敷地で複数の企業体が同時に工事を進めるため、安全管理を徹底する必要があったという背景があります。そのため、管理区分を「ステップ1」「ステップ2」といった形で明確に定めました。

こうした管理区分について関係各社で合意を取りながら、それぞれの会社が安全に工事を進めていく体制を構築した、ということです。

 

最初にフロントローディング期間についてご説明します。

最初のピンク色で示している部分が、品質確保・工程に関する様々な課題に向けた各種フロントローディングを実施した事例です。この物件は、ダイナミックな多面体デザインが特徴であるため、早期に外装仕様を決定し、鉄骨加工内容を確定する必要がありました。

 

そこで、設計図から外装モデルを作成し、フロントローディングとして形状の検討を実施しました。

その後、外装仕上げモデルを定義しましたが、これはBIMを用いて作成しています。

さらに、この外装仕上げモデルをもとに、外装の目地を含めた3Dモデルを作成しました。

そのモデルから断面を切り出し、2D断面図として再検討を行っています。

加えて、モックアップを作成し、外装部分の形状や収まりを確認しました。

最終的には、図面との整合を確認することで、設計内容の妥当性を検証しました。

 

次に、緑色の部分について説明します。

ここでは、フロントローディングを行ったうえで、鉄骨の制作図との連携について紹介します。

フロントローディングで作成した加工モデルには、モデル線部に断面情報が内包されています。その情報をもとに、Grasshopper と Grasshopper–Tekla Live Link を用いて、Tekla Structures へモデル連携を行いました。

 

Tekla とは、私たちが使用している Rhinoceros/Grasshopper(Rhino+GH)とデータ連携することで、Tekla 側のモデルを生成できるツールです。Tekla は、大手の鉄骨ファブリケーターが使用している BIM ベースの鉄骨制作図作成ツールです。

連携された Tekla モデルについては、質疑応答を重ねながら検討を進めました。このモデルから、図の黒い矢印で示しているように、制作要領を作成し、さらに質疑応答を繰り返すことで、モデルの精度を制作図レベルまで引き上げていきました。

鉄骨に関わるすべての要素についてモデル化を行い、最終的に鉄骨製作モデルとしています。

鉄骨製作に関わる各種資料は、このモデルからすべて出力される、という構成になっています。

 

さらに、サブアリーナのエントランス部分についてです。

この部分は形状が複雑であったため、施工検討に引き続き、詳細な施工要件を反映する必要がありました。

形状がやや歪んでおり、きれいな三角形ではありませんでした。

そのため、現場作業所が主導し、鉄骨製作図用のモデルを作成しました。

このモデルから一般図や製作図など、製作用の資料を作成し、鉄骨ファブリケーターへ提供しています。

 

S-FABで対応する部分については、日鉄エンジニアリングが対応しましたが、

S-FABではないHファブが対応する部分については、弊社が指示を行っています。

 

モデリングには、RhinocerosとGrasshopperを積極的に使用し、加工条件を組み込んでモデルを構築しました。

また、水平ブレースについては、最適化手法を用いて配置しています。

3Dモデルが存在しない工事箇所については、2Dモデルを貼り付けるなどして検討を進め、全体の鉄骨モデルを作成しました。

ご覧いただいている通り、細部に至るまで詳細なモデル化を行っています。

 

当然ながら、この鉄骨製作モデルからは一般図の作成が可能であり、あわせて製作図も出力しています。

製作図については、一般図が承認されたモデルから切り出しているため、製作確認用の寸法は省略しています。

通常、設計事務所からは「寸法を入れてほしい」と言われることが多いのですが、

今回はモデル合意が取れているため、図面上での寸法記載は省略しています。

 

さらに、今回の工事ではパイプ材を使用しているため、パイプ展開用のフィルムを製作し、ファブリケーターへ提供する目的で、モデルからこれらのフィルムデータを出力しました。

 

次に、施工におけるフロントローディングについてご紹介します。

まず、施工計画についてです。

鉄骨製作モデルは、そのまま現場を表現しているため、これを「デジタル化されたデータ」として捉えます。これがいわゆるデジタイゼーションです。さらに、そのデータを管理し、運用することで、デジタライゼーションとして現場へ展開しました。

単にモデルをデジタル化することがデジタイゼーションであり、それを実際の業務で活用・運用することをデジタライゼーションと呼びます。ここからは、デジタライゼーションの具体的な事例をご紹介します。

 

これは施工ステップの例です。一般的な建築工程表をモデルと連携させることで、施工ステップを可視化できます。

このように、日単位で施工の進捗が分かる施工ステップを作成しました。

先ほどの鉄骨モデルを、このような日割り施工の可視化に活用しています。

また、鉄骨の建て方計画、つまり組み立て計画にも活用しました。

 

建て方計画では、「地組」と呼ばれる方法を用いています。これは、クレーンで吊る最小単位の部材を地上で仮組みし、敷鉄板の上で組み立てた後、クレーンで吊り上げてボルト締結する方法です。この地組単位でモデルを細分化し、切り分けました。

地組ごとに使用する道具が異なるため、計画は非常に難易度の高いものでしたが、実際に想定される作業スペース内に地組を設置し、検証を行いながら計画を具体化しました。

 

続いて、鉄骨製品モデルを3Dデータとして運用した事例を紹介します。

スマートフォン、iPad、PCのいずれからでも、合番(部材の組み合わせ)を確認することが可能です。

ボルトの寸法やジグの寸法、ボルトの長さなども調べることができます。

2D図面では分かりにくい部分についても、3Dモデルは現場で大きな効果を発揮しました。

 

次に、現場でARを活用して相番確認を行った事例です。

iPad上の鉄骨モデルを、実際の現場にARで重ね合わせた事例になります。

モデルを選択することで、さまざまな情報を表示することができます。

最後に、立方ステップの現場でARを表示した施工事例です。

実務で使用した立方ステップをARで表示しました。

位置合わせには課題が残りますが、ツールが手頃になってきたこともあり、今後のAR活用に期待を持てる結果となりました。

 

続いて、デジタル技術を活用した承認・施工に関する事例を紹介します。

まず、VRを鉄骨検査の補助として使用した事例です。

形状が複雑で、2D図面に切り出しても理解しづらいフレームについて、VRを用いて設計者に原寸大で形状を確認してもらいました。ヘッドマウントディスプレイを装着し、実際の構造設計者が鉄骨の裏側に回り込むような形で、形状を確認している様子です。

 

次に、ARを用いて鉄骨製品検査を補助した取り組みを紹介します。

製品検査台に載っている製品に対して、製品モデルをARで重ね合わせ、確認を行いました。

歩きながら確認しても、モデルは製品に重なった状態を維持します。

この重ね合わせには「モデルターゲット」という仕組みを利用しています。

通常は移動すると表示がずれてしまいますが、モデルターゲットを使うことで位置が補正され、大枠の違いを視覚的に確認することができます。

 

続いて、ハンディタイプの3Dスキャナーを用いて鉄骨製品検査を補助した事例です。

9mm弱の精度での計測にも対応できるハンディスキャナーを使用しました。

計測結果は3Dモデル化され、製品検査表と比較しても問題のない精度でした。

スキャンデータは製品モデルと自動で重ね合わせることができ、左右の差異をカラーマップで評価するツールも用意されています。ARによる確認とは異なり、ミリ単位での定量的な評価が可能です。

 

次は、写真にモデルを重ねて、高所など直接確認しにくい鉄骨製品を確認した事例です。

現場で撮影した写真にパースを合わせ、モデルをワイヤーフレーム表示で重ねることで、ガセット部などを簡易的に確認できます。これはRhinoceros(ライノセラス)の標準コマンドを利用したもので、手軽に使える点から推奨できる方法です。

 

最後に、ARを用いて現場の製品にモデルを重ね、製品を確認した事例です。

先ほど紹介した製品検査用ARと同様の技術を用い、内線モデルの重ね合わせ表示を試行しています。

 例えば、部材が正しく取り付けられているか、向きが合っているかといった点を、その場で視覚的に確認できます。

以上、フロントローディングから外装工事、鉄骨工事に至るまでのモデル連携事例について紹介しました。

 

これは、設計段階からフロントローディングを行い、設計図作成から現場着工後までを一貫してフロントローディングで進め説明です。その過程で、屋根メーカーさんにデータを連携し、さらに鉄骨FABさんへデータを送信し、現場で活用するところまで含めたモデル連携を示しています。

具体的には、施工モデルを、メーカーさん、屋根工事を担当する元旦ビューティさんまで連携させたデータ連携の全体像を表しています。

 

これも施工モデルの連携事例です。

鉄骨モデルをTeklaで作成することで、現場の足場検討用モデルを肉付けすることができますし、先ほどご紹介した製品検査や、VRを用いた元請検査にも活用しました。また、冒頭で紹介した建方ステップのMR活用や、足場モデルとしても使用することができました。

このような取り組みを通じて、SAGAアリーナのプロジェクトは順調に進行し、完成に至ることができました。

 

最後に、マネジメントの振り返りです。

CM、設計事務所、そして戸田建設の三者は、以下のようなマネジメントを行っていました。

まず、CMと戸田建設が「統括管理」を担い、複数の企業間における統合調整を行っています。加えて、チームビルディングにも注力しており、CM、設計事務所、戸田建設が一体となって課題解決に取り組む体制を構築していました。

 

デザインマネジメントについては、地元・佐賀のデザイナーを起用し、主にCMと設計事務所が中心となって、地元デザイナーと協働しながら内装デザインを決定したとのことです。

また、地元のステークホルダーを含む多くの関係者が関与するため、ステークホルダーマネジメントも重要なテーマとなりました。

 

デジタル活用については、設計事務所と戸田建設がBIMを活用し、設計から施工まで一貫して活用する形につなげています。

全体工程については、結果として工程が2か月延伸しましたが、地中障害や軟弱地盤といった課題を踏まえつつ、延長を2か月に抑えるための調整が行われました。以上で説明を終わります。

  


<ディスカッション>

 

・(質問コメント)臨場感のあるプレゼンテーションで、戸田建設さんのデジタルトランスフォーメーションについて、非常によく理解できたと思います。内容については、さまざまなご意見やご質問があるかと思いますので、ぜひお聞かせください。

 

 

・本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

フロントローディングを進めるうえで、一点気になったことがあります。

やはり、専門工事業者の方々が入らないと、なかなか物事が決まらないという点です。

今回のお話では、「鉄骨を決める前に外装を決めた」という点が非常に印象的でした。

通常は、まず鉄骨業者を決定し、その後に外装業者が決まっていくケースが一般的だと思います。

今回は、その順序が逆だったということですね。

 

⇒(回答コメント)実は、ファサードの形状が先に決まっており、デザインがフィックスされていました。そのため、Rhinoceros と Grasshopper を使って、あの三角形の形状を制御しています。

 

まず、設計事務所の図面をベースにして、SS7 や MIDAS といった構造計算ソフトで解析を行うと、モデル自体は自動的に生成されます。そこに意匠モデルを重ねると、外装と鉄骨が干渉して突き破ってしまう状況が発生しました。

この状態になると、「まず鉄骨を決めてから外装を決める」という通常の進め方が成り立たなくなります。

 

そこで結局、Rhinoceros と Grasshopper で外装形状を先に決め、それと連動して立体オフセットを自動生成するプログラムを組みました。外壁を押すと、それに追随して鉄骨も後ろに下がる、というような連動関係を持たせたのです。

つまり、ファサード側から鉄骨を決めさせてもらう形になり、結果として鉄骨の位置やディテールも変わっていきました。このあたりが、通常の建物とは少し違う点だったと思います。

 

 

・最初に外装の形状をフィックスし、そこから追い寸法で構造を詰めていく、という進め方ですね。

 

⇒先ほどの紹介にもありましたが、外装の折り曲げ部分についても、木型のようなものを作って板金を曲げる必要があり、藤沢にある元旦ビューティさんのところまで実際に足を運びました。

 

 

・メーカーさんも、かなり早い段階で設計協力されていたのですか?

⇒多分そうだと思います。私は官庁工事の詳細までは分からないのですが、元旦さんも日鉄さんも、結果的には協力関係にあったのではないかと思っています。

 

 

・この手の話は、やはり専門工事業者さんがBIMについてこられず、なかなか進まないケースが多いですよね。今のお話でも、元旦さんが細部まで対応しきれない部分があったとのことですが、そのあたりは戸田さん側でかなりフォローされた、という理解でよろしいですか。

 

⇒元請けである私たちは、かなり、足しげく現場に通っていました。

それから、鉄骨ファブリケーターについても同じです。日鉄さんのようなスーパークラスのファブリケーターはTeklaを使いますが、地元のファブさんはTeklaを使わないケースが多いです。そうなると、ゼネコン側でTeklaモデルを作成し、制作図モデルのレベルまで持っていく必要があります。

今回も鉄骨部材のナンバリングはこちらで対応しましたし、徹底的にやりました。

 

 

・Teklaは、以前から使われていたのですか?

⇒Teklaは、実は今回で2回目です。最初は千葉にあるJFAのクラブハウスで使いました。そこで初めて本格的に導入しました。その案件も今回と同じで、木が反り上がったような複雑な形状でした。まずサーフェイスを決めて、そこから鉄骨を逆算して押し出すような設計の物件でした。

 

 

・PM部長としてお話を伺っていて、まず一点、驚いたことがあります。

一般的にエンジニアリング会社の場合、プロジェクトマネジメントマネージャー、あるいはその部門の役割は、基本的には「マネジメント」に特化している印象があります。

 

今のお話を伺っていると、責務のかなりの部分をフロントエンドローディングで担い、設計・調達・施工までを一貫して管理し、そこまで踏み込んでプロジェクトを遂行されているように見受けられました。

これは相当大変なのではないか、というのが一点目です。

 

二点目ですが、BIMについてです。

私はBIMにはそれほど詳しくないのですが、ゼネコンさん、たとえば竹中工務店さんなどから伺った話では、BIMの最大の活用効果は、データを蓄積し、As-Built(竣工時データ)として保有することで、次回以降のプロジェクトに活かし、フロントエンドローディングの期間を短縮できる点にある、ということでした。

この2点について、ご見解をお聞かせいただければ幸いです。

 

⇒1点目についてですが、「どこまでフロントローディングを、どの部署が担うのか」という議論があります。

私たちゼネコンの場合、縦割りの組織構造だと、いわゆるバトンリレー型・ウォーターフォール型ではうまく進まない案件があります。そうした案件については、実は私たちの部門が関与しています。

 

今回の案件では、非常に複雑な鉄骨形状があり、形状そのものに起因するリスクが存在していたため、かなり踏み込んだ管理を行いました。ただし、通常はそこまで複雑な形状ではないケースがほとんどです。その場合は、もっとシンプルに形を整理し、課題やリスクを特定します。PMBOKで言うところのリスク特定を行い、BIMでリスクを可視化したうえで、最終的には再び縦割りの体制に戻す、という進め方もしています。

 

つまり、プロジェクトによって私たちの部門が担うスコープはかなり異なります。ただ、その違いは社内の縦割り組織にはなかなか理解されにくい。そこで、最初にプロジェクト計画書を作成します。この案件にはこういうリスクがあるので、私たちの部門はここまで踏み込みます。ここから先は通常の縦割り組織に引き渡します。従来どおり対応できる範囲はここです、という筋道を明確にし、合意形成をしたうえで進めている、というのが現状です。

 

次に2点目です。

確かにゼネコンは、複雑な形状の設計よりも、標準化設計を志向します。他社さんも同様だと思います。その前提に立つと、BIMにもいろいろな種類がありますが、標準化設計に向いたBIMツールがあります。

 

それが「Revit(レビット)」です。Revitはファミリー形式で構成されており、数量算出から、いわばBOMのように数量をすべて吐き出すことができます。詳細な図面化まで対応できるBIMツールです。標準化設計によって効率化を図るという意味では、四角い建物についてはRevitは非常に適していると思います。

 

今回のSAGAアリーナの案件のように複雑な形状の場合、Revitではなかなか対応できません。そのため、Rhinoceros(ライノセラス)やGrasshopperといった、より特殊なツールを使い、データ連携の力で設計・管理を進めています。

このように、標準化設計を前提とする案件と、形状そのものが課題解決の対象となる案件があり、大きく二つに分かれていると考えています。

 

  

・門外漢ですので詳しいことには踏み込めないんですけども、従来の仕事のやり方でやっていた方々をこのフロントローリングに巻き込んでいくことをやられたわけですよね。そこには、かなり抵抗があると思いますが。

 

⇒もう6年間になりますが、現在ではほとんど知られる存在になりました。

ゼネコンというのは、「こんなに難しい物件を、どうやってやり切ったのだろう?」という実績を示さないと、社内はなかなか納得しないのです。

 

そこで私たちの部門では、あえて、かなり難易度の高い案件を選んでいます。そうした案件で、新しいやり方をできるだけ実務に使って、「この方法でやれます」「これが成果です」という実績を作っていくことが必要になります。

その結果に納得した人から順に教育をかけていく、という形を取っています。

 

 

・このフロントローディングの考え方は、建設業以外の分野でも使えますよね。

⇒基本はPMBOKに準じていますので、かなり汎用性は高いと思っています。

 

 

・総合エンジニアリング会社というのは、日本でも海外でも共通しています。

1900年代から取り組んでいますし、私自身もインドネシアから帰国した1978年には、すでにフロントローディングに限らず、プロジェクトマネジメントのグローバル体制づくりを進めていました。まず教育ありき、という考え方です。

 

 

・Tekla を使われていたのは、特殊形状だったからだと思います。通常の案件であれば、Revit などで運用されているのではないかと思ったのですが、実際はいかがでしょうか。

 

⇒私たちゼネコンでは、設計段階では Archicad や Revit を使っています。ただし、鉄骨の製作図まで落とし込まないと意味がありません。そこで、形状が複雑な部分については Tekla を使い、比較的単純な形状の部分は Real4 を使っています。同じ物件の中でも、複雑な部分は Tekla、単純な部分は Real4 というように使い分けています。そして、WBS を作成し、部位ごとに分けて、後から統合するという進め方です。

 

BIM を使っていない会社もありますので、そうした場合は、製作図作成や施工検討用には別のソフトを使われています。汎用ソフトを使っている会社もありますので、そうした汎用ソフトと Real4 を併用してみてはどうか、というアドバイスもしています。

 

 

・Real4 は鉄骨に特化したイメージがありますが、構造だけでなく、設備なども Real4 でやっているのでしょうか?

 

⇒それについては違います。鉄骨は Real4、設備は Rebro です。うちの会社では最初、別のソフトも使っていましたが、フロントローディングを進める中で、BIM との親和性が今ひとつでした。その点、Rebro は BIM を軸にして、FM までつなげていこうという思想を持っていたため、現在はこちらを使っています。結果として、Rebroのシェアはかなり増えてきていると思います。

 

 

・中堅ゼネコンの方々と対話する機会が何度かありましたが、多くの場合、設計は 2D で行い、その後の 3D 化や「見せるための BIM」は社内体制が組めないため、外注に出している、という話をよく聞きます。

 

⇒正直なところ、そこは少し違和感があります。

 

 

・そういったやり方が大半なのかなと思っていたのですが、戸田建設さんの場合は、自社でかなり内製されている印象があります。基本的には内製でできているのでしょうか。

 

⇒必ずしもそうではありません。内外製分析を行い、この部分は外注、この部分は内製、という形できちんと仕分けしています。それから、2Dを否定しているわけでもありません。最初のプランニングは2Dから始まります。例えば、BIMの空間の中に2Dの平面図を各階ごとに浮かせて配置し、そこに構造の柱や梁を置いていく、といった使い方をしています。いわゆるボリュームモデルは内製で行いますが、詳細化が進むほど外注化していく、というのは当然あります。

 

社員がすべてオペレーションまで担ってしまうと、やはり大変なことになります。そこで、オペレーションとマネジメントを明確に切り分け、社員は基本的にマネジメントに専念する体制にしています。外注化は悪だ、という考え方を持つ人もいますが、我々はそうは考えていません。内外製分析をきちんと行えば問題ありません。

 

 

・BIMを運用する際の体制として、BIMマネージャーやBIMコーディネーターといった役割名称を設けているのでしょうか。

⇒そういった言葉は特に使っていません。普通に「使う」というスタンスです。

 

 

・3Dモデルとですね、スケジューリングツール、Primavera などをリンクさせて、いわゆる「4次元CADモデル」を使った工程まで含めた管理というのは、もう実施されているんですか。それとも計画中ですか。

 

⇒もう普通に行っている状況です。

今進めている案件は鉄骨構造なので、Navisworks を使って工程を工程表とリンクさせています。ただ、Navisworks だけでは手に負えないものは、別の工程管理ソフトとリンクさせて運用しています。Primavera そのものではありませんが、工程ソフトと連携させてやっています。

 

  

・コロナのときに、2か月の遅延がありましたよね。遅延というか、事情があって。

 

⇒それが問題になるのは日本なんですよ。

海外はガンガン延びるんですよね。当たり前だ、という扱いになるんですが。

結局、日本はランプサム契約で、いわゆる「請負け」になってしまう。

何かあってコストがかかっても、その分は基本的に認められず、「とにかくリスクは自分たちで飲み込め」というのが日本の文化です。だから、プロジェクトマネジメントと言っても、海外と日本では工程の考え方が根本的に違う。

 

 

・今日は初めて参加させていただきましたが、非常に興味深い内容で、大変感激しました。

私のほうはどちらかというと、プラント、特に発電所などの設備を中心に扱っています。そのため、フロントローディングの観点で「どこに着目するか」という点は、若干違う部分があると感じながら拝聴していました。

そこでお伺いしたいのですが、今回のように非常に異形性が高く、加工上のポイントとして、プラント側ではあまり意識しないようなリブプレートの位置などをモデルに反映し、それを活用していくという流れが紹介されていました。

 

一方で、一般的な建設物や、プラント内にある建物という観点で見ると、リスクという意味では、設備側、特に電気設備が入ってくる部分と、建築側の設計範囲との干渉確認などに目が行きがちです。そこまで行くと、どちらかというと現場合わせの世界になり、あまりモデルの粒度が上がってこない印象もあります。

そのあたりについて、案件ごとにどのような使い分けをされているのか、お伺いしたいです。

 

⇒よくあるのは、建築の場合は最近「別途工事(分離発注)」が多いという点ですね。

それは、CM(コンストラクションマネジメント)方式で分離発注されてしまうからです。お金が合わないと、建築は建築、設備は設備でそれぞれ競争入札で決める。結果として、ゼネコンの組下で一体的にやるケースが減ってきています。

 

そうなると何がリスクかというと、建築で言えば外構インフラや基礎への「飛び込み」です。

建物があって、例えば免震を600mm、650mm動かしたときに、配管経路が基礎に当たる、といったことが起きる。そうすると、設備のルーティングを決めないと、実は躯体形状が決まらないんですよね。

 

基礎が決まらない。さらに、上部のシャフト、縦動線を決めないと、建築のエレベーターや階段シャフトだけでなく、PS、EPS、DSも決まらず、建物として破綻します。そういった「建物として成立するかどうか」の部分に、BIMを使っています。

 

そのためゼネコンは、サブコン(設備業者)が決まるまで、別途であろうが組下であろうが、ゼネコン側で全体の設備モデリングを行います。それで躯体を決める。大枠はすでにすべて収まっている状態です。

いわば「孫悟空のお釈迦様の手のひらの中」に収まっているので、あとはTfasやRebroで、設備側が施工図をきっちり詰めていく。「この前提を崩さない範囲でなら、多少変えてもいいからやってください」というデータを渡しています。

 

そうしないと、建築自体が収まらないんです。

例えばガラリや換気口が、そもそも設計されていないケースもあります。そうなると、ガラリの位置から決め直さなければなりません。ひどいケースだと、機械室が狭すぎて、30年後に機械を取り出せない。動線がない、階段がない、屋上に機械を搬入するルートがない、などもあります。こうした点は建築に大きく影響します。

 

要は、建築と設備を一体で考え、両方の課題を同時に解決する。その「致命的な毒」を先に取り除いておく。そうすればサブコンも安心して作業できる。その上で、ケーブルラックのモデルは電気へ、ダクトと配管のモデルは機械へ渡す、という運用をしています。

 

 

・なるほど。それができるのは理想的ですし、そこまで先を読んで「トラブルは起きない」と言い切れる実力が御社にあるからこそ可能なのだ、という印象を持ちました。

 

 

⇒それにはやり方があります。

6年ほど前にもお話ししましたが、プロジェクト計画書の作り方です。

 

建築と設備のWBSを作るんです。

建築図や設備図は何百枚もありますが、1枚ずつ見ていても全体像はつかめません。

そこでWBSで、「この建物は免震がある」「基礎がある」「ピットがある」「地下があるかないか」などを細かく分解していく。そうすると、過去のデータからリスクを特定できるようになります。

 

その結果、今回の案件では「このWBS項目が最もリスクが高いから、ここは詳細なBIMモデルを作ろう」「ここは粗くていい」という判断ができる。WBSを見ながら、モデルの粒度を決めるわけです。設備はいつまでに、建築はいつまでに設備と統合する、というプロジェクト計画を作り、内製・外注の分析をしながら発注をかけ、統合して課題解決を行う。

 

そこまでやらないと、「何のためにBIMをやっているのか」という話になります。

後から形だけ整えて「BIMをやりました」と発表しても、正直あまり意味はないと思っています。

目的と手段が逆転するのは避けたい。

やはり、プロジェクト計画を立てて、期限内に収める。それが本来のマネジメントだと考えています。

 

 

・今の件に関して、モデルベース・プロジェクトマネジメント(MBPM)を手がけてこられた立場から、ご意見はありませんか。

 

・私は建築業界についてはそれほど詳しくないのですが、今日は大変勉強になりました。私たちが取り組んでいるモデルベースの考え方は、まさにフロントローディングの発想そのものだと感じています。非常に参考になりました。

 

正直なところ、ここまでやるのが建築では一般的だと思っていました。フロントローディングは当たり前で、皆そうやって建てているものだと考えていたのですが、それが最新事例だと聞いて驚きました。逆に言うと、他のビルはどうやって、そこまでやらずに建てているのだろうかと不思議に思ったくらいです。

 

 

・先ほど、設備工事と建築工事が別々で進み、その結果として不具合が発生するという話がありましたよね。普通は一緒にやるものだろう、というのが一般的な感覚だと思うのですが、実際はそうではない。その点も含めて、建築業界というのはかなり難しい社会構造を持っているのだと感じました。

 

⇒基本的にゼネコンは縦割り思考の強い組織でできています。

よくあるのが、「組織は縦割りのままだけれど、BIMのツール環境だけは整えました」というケースです。それでは一向に改善されません。ツールがあっても、人が使わなければ意味がない。結局は人の感情の問題です。

 

人と人との関係性をきちんと作り、業務のやり方そのものを、生産性向上という観点で見直す。「今回、一度やり方を逆転させてみよう」といった合意形成やチームビルディングをしない限り、BIMは使われないと考えています。

 

 

・お話を伺っていて、ARを使ったり、さまざまな「見せ方」を工夫されていると感じました。その中で、BIMはコミュニケーションのプラットフォームではないかと思っています。その基盤には明確な目的意識がないと、なかなか成功しないとも感じます。

 

⇒正直に言うと、すべてが効率化しているとは思っていません。

ただ、BIMを使うことは、設計上・施工上の不具合を施工側で可視化し、「同じチームとしてやっていきましょう」というチームビルディングにつなげるための、ステークホルダーとの関係構築ツールでもあると思っています。相手を味方にして、一緒に価値をつくっていく。そこが一つの大きなポイントかなと考えています。

 

 

・来月のP2Mクラブですが、池さんにプレゼン(話題提供)をお願いしています。

モデルベース・プロジェクトマネジメント(MBPM)について、先端的な内容をお話しいただく予定です。新しいツールもリリースされるそうで、そうした最新動向も聞けると思います。1月28日開催ですので、ぜひご参加ください。

 

 

・先ほども少し話題に出たかもしれませんが、さまざまなツールを連携させながら進めているという話がありました。その中では、やはりシステム連携に関して難しい点が出てくると思いますが・・・

 

⇒データ連携にはテクニックがあります。たとえば、AからBへ直接データ連携しようとしてうまくいかない場合、Cを経由して連携したほうがよいケースもあります。どうしてもツール間で直接プラグインできないことがあるのです。

 

その場合、迂回的な方法で対応しますが、データが100%完全に連携するわけではありません。最低限必要なデータだけを連携し、残りは再度リモデルせざるを得ないこともあります。このあたりは業務への影響や、工程に間に合う・間に合わないといった点にも関わってきます。ですから、データ連携を前提に作業量を見積もり、全体のストーリーを描くことが重要です。がむしゃらにBIMモデルを作るだけでは、うまくいかないと考えています。

 

そうした「つなぎ」の部分のサポートは、社内人材で対応しているのかという質問ですが、必ずしも社内だけではありません。社内にデータ連携が得意な人材がいない場合は、社外の専門家とチームを組み、バーチャルチームとして対応しています。

 

実際、社内の社員ではどうしても対応できないプログラミングがある場合、外部の会社に連絡し、プロジェクト計画書をもとにフォローしてもらいます。「何月何日から何月何日まではこのプログラムに参画します」という形で関わってもらい、Zoomで会議にも参加してもらっています。そうした形で、かなりスムーズにプロジェクトは進んでいます。

 

 

・縦割りだとおっしゃいますが、むしろ縦割りの構造はすでに崩れて、チーム化が進みつつあるように感じました。フード分野もかなり前に進んでいる、という印象を持ったのですが……

 

⇒いや、実際は全然そんなことはないですね。

 

 

(総括コメント)

 

・時間も残り20分となりましたので、最後に一言ずつ、統括コメントという形で感想をいただければと思います。

 

 

・弊社でもこれからフロントローディングを本格的に取り入れようとしています。部分的にはすでに実施していますが、トータルとしてのフロントローディング型プロジェクトマネジメントを検討しており、非常に勉強になりました。

 

設備と建築では違いがありますが、設計段階から協業を行い、設備が建築に大きな変更を与えない形で進めることが重要です。実施設計以降に変更が発生すると、プロジェクトが進まない、あるいは後戻りが発生するなどの問題が生じます。そのため、できる限り効率よく設備を収めることを日頃から意識し、さまざまなチャレンジを行っています。

 

⇒実は私も設備の設計も経験しているので、プラントや工場のプロジェクトでは両方の視点を活かすことができます。BIMを活用する際にも非常に都合の良い経験です。プロジェクトマネジメントを行う上で、設備設計の経験は非常に重要だと思っています。

 

特に工場では説明やコミュニケーションが重要な場面があります。海外のプラント業者は最初にモデルを提供してくれないことがありますが、こちらで系統図を基にモデルを作り統合案を示すと、「ここまでやるならこれを使ってほしい」と返してくれることがあります。プラント業者は非常にプライドを持っているので、こちらが手を動かして誠意を示すことで、相手からも必要なデータや情報を提供してもらえる関係性を作れるのです。

 

 

・今日の話は本当に、まったく新しい内容で、とても勉強になりました。勉強になったかどうかはまだわかりませんが、頭が下がる思いです。IT業界の視点からも「なるほど、プロジェクトにはこんな形もあるんだ」と非常に参考になりました。昔、田中さんたちと一緒にISOのプロジェクトマネジメントの標準を作った経験がある者として、こういう場面でも「プロジェクト」という言葉が使われることを知り、とても勉強になりました。。

 

 

・本日は貴重なお話をありがとうございました。対象となる設備はプラントであったり、建設であったりとさまざまだと思いますが、今日のお話を伺いながら、やはり肝心なのは事前の計画だと改めて感じました。フロントローディングの重要性についてのお話でしたが、そこに尽きると思います。それでもプロジェクトは予算オーバーしたり、遅延したりすることがあるので、本当に難しいと感じます。本日の講演を通じて、その点を強く実感しました。

 

 

・普段はITのシステム開発を担当しておりますので、今日のお話は、普段の業務とはかなり違っていて、とても興味深く拝聴しました。技術的にも深く理解された上で、プロジェクトマネジメントを行い、各所を調整しながら進められている様子がよく分かりました。また、フロントローディングによって工程が並列で進むようになっており、過去の直線的な進め方に比べて複雑さが増していることも感じました。

 

入札の段階では、ある程度の金額が目安として決まっている場合もあるとのことですが、大きく外れるわけにはいかないと思います。そのため、入札前に費用の目安を固め、事前にある程度の計画や目星をつけて進めている点も、とても高度な取り組みだと感じました。本日のお話は非常に勉強になりました。

 

 

・我々も戸田さんのプロジェクトで一緒にやらせていただきましたが、私の立場から見ると、テクラがなければ絶対に実現できなかったと思います。テクラがあったからこそ、あそこまで複雑な建物も実現できたのだと感じています。これからも、テクラを活用して、ああした複雑な建物を手掛けられたらいいなと思っています。機会があれば、ぜひまたよろしくお願いいたします。

 

⇒そうですね、日鉄さんがいなければ、あれも実現できませんでした。

 

 

・質問は多々させていただきましたが、非常に明解なお答えをいただきました。最後に、感想というか余談的な話を少しさせてください。

 

1990年前半、私が部長をしていた時のことです。私の所属は、いわゆるプロジェクト事業部の台所的な部門でした。突然、東京都の臨海副都心開発事業のコンサル案件を担当することになりました。これは一般的なCM会社のようなやり方ではなく、私がその頭として関わることになったのです。

 

実際には、鹿島さんの指導を受けながら進めたのですが、その時に感じたのは、鹿島さんのやっているプロジェクト管理が非常に徹底していて驚いたことです。ここまで精密に管理するのかと。これはゼネコン全体に通じることだと思います。本日のお話を聞いても、やはり日本のゼネコンだけがこのレベルのテクニカルマネジメントをやっているのではないかと、世界を回ってきた経験からそう感じます。

 

ただ、部門の壁があるのはやはり業界のDNAのようなもので、簡単ではありません。この部門の壁を横断する力が芽生えれば、日本のゼネコンのグローバル競争力は確実に高まると思います。そのような思いを持って、本日の話を拝聴しました。

 

 

・やっぱり4Dまで行っているのがすごいなと、正直関心しました。

BIMという言葉だけが先行して独り歩きしている中で、4Dまで実際に取り組んでいるところはなかなかないんじゃないかと感じました。

 

 

・今回、非常に特殊なゼネコン案件の中でも、特殊なタイプの案件を、従来のやり方ではなく、独自の方法で進められたと思うのですが、そのためには乗り切るだけの能力のあるメンバーを集める必要があったと思います。

 

その点で、トップの方々がどう人を集められたのか、という点が1つ。

 

あとは、今回の大規模プロジェクトで、例えば10人ぐらいのプロジェクトマネジメント担当を分野ごとに配置したり、外部の中国企業のテクラのエンジニアを何十人も活用したりという話がありましたが、その費用の負担はプロジェクトの予算で賄われたのか、それとも全社で負担した形だったのか、教えていただければと思います。

 

⇒最初は、人材の調達は私の役目で、外部からバーチャルチームを作るところから始めました。テクラチームを作るために、いろいろな候補に声をかけましたが、断られることも多かったです。忙しいから無理だと言われる中で、今回はいいよと言ってくれる人と組み、海外のバーチャルチームを作りました。

 

例えばライノセラスのグラスホッパーなど、プログラミングに長けた会社も業務委託で引き入れるのが僕の仕事です。社外チームと社内チームに足りない人材がいれば、業務委託でチーム編成を行います。

 

当時はテクラの技術を使うというのがまだ理解されていない時代でした。しかし、テクラを使えばできるという自信があり、チームを作りました。

 

最初はテクラではなくアーキ・レビットでモデルを作り、「こんなに問題がある」と見せることで、人は動きます。反対意見はあっても、説得を続けるのが重要でした。経験を積むにつれて、徐々に会社の空気も変わってきました。

プロジェクト費用は全社負担ではなく、プロジェクトの予算で賄うようにしています。

 

 

・残り時間2分になりましたが、本日は大変貴重なお話をありがとうございました。

最後に松岡さんからまとめのコメントをお願いいたします。

 

⇒実は私がPMAJに入ったのは、技術営業をしていた時でした。当時、建設業界では縦割りがひどく、提案書を作るにも各部門がバラバラで矛盾だらけになってしまい、一貫した技術提案書が作れず悩んでいました。そこでPMAJの講習を受けた記憶があります。PMCの講習は4日間でしたが、1回欠席して3回しか受けられませんでした。しかし、講師の配慮もあり、4回出席したとみなして試験を受け、資格を取得した経験があります。

 

理論上のプロジェクトマネジメントといっても、建築業界は縦割りで力関係や人間関係が大きく影響するので、単に指示を出すだけではうまくいきません。そこでCM協会にも入り、CMの知識を身につけました。

 

つまり、顧客やCM会社の考え方を理解し、リスクに対応するためには勉強が必要です。こうした経験を通じて、BIMを活用しながら仕事を進めてきました。PMAJで学んだことは、自分の人生の大きな転機になったと思います。本日はありがとうございました。

 

・ありがとうございました。資料も送っていただき、大変参考になっています。

それでは、皆さんからご意見がなければ、時間になりましたのでこれで終了といたします。  以上

 

 

<注>

資料は改訂される可能性がありますのでご了承ください。