「第7回夢工学サロン-2023/5/23」

 

「第7回夢工学サロン-2023/5/23」議論概要

~川勝さんを囲んでのしゃべり場~

 

「夢工学/DEC思考の実践事例」 の紹介

~成功と失敗の5大事業プロジェクト~ <前編>

 

文責:岩下

 

 

 「夢工学/DEC思考を具体的にどういう風にやっていくのか?」「実践するには訓練が必要とのことだがどの様なことか?」という意見がありますので、改めて川勝さんに、実践編として「成功と失敗の5大事業プロジェクト」についてお話を伺うことにしました。

  1.新日鐡・MCA ユニバーサル・スタジオ PJT(1878−1879年)<その1>

  2.セガ・ジョイポリスの第1号館&全国多館展開 PJT(1992−1995年)

  3.岐阜県世界淡水魚リアル&バーチャル水族館 PJT(1995−1999年)

  4.岐阜県・昭和村 PJT(1999−2003年)

  5.新潟県・大型太陽光発電所 PJT(2005−2011年)

 

 今回は<前編:その1>として、「1.新日鐡・MCA ユニバーサル・スタジオ PJT」について、その顛末を伺いました。

次回は<その2>として、残りのプロジェクトについて伺う予定です。

 


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<発表資料>:「5.1 <第1部>新日鐡・MCA ユニバーサル・スタジオ・プロジェクト その1 :P1〜P63」
成功と失敗の5大事業プロジェクト 第1部 川勝良昭 052323.pdf
PDFファイル 4.8 MB

<川勝さん:講話(前半)>

 今日は「成功と失敗の5大事業プロジェクト」の<前半部>ついて説明するつもりです。

 

 一つ目は、皆さんご存知の「ユニバーサルスタジオツアー」という、今大阪でハリーポッターで有名ですけど、これを日本で初めて手掛けたのが新日鉄です。私が勤めた会社です。このプロジェクトについては、私としては失敗したつもりはないんですが、途中でこの計画が中止となったことで失敗ということです。

 

 その後、私はスカウトされ新日鉄からセガに移りました。皆さんはジョイポリスをご存知か分かりませんが、私はその第1号店を横浜につくって、その後、日本全国で多店舗展開しました。このプロジェクトは大成功で、テレビや新聞、雑誌などに多く取り上げられ、私自身も一躍有名人となりました。

 

 それを見た岐阜県の梶原知事が、川勝を呼べということで、呼ばれて色々話しているうちに、岐阜県に月面都市テーマパークを作ってくれと、とんでもないことを言う知事だったんです。もうお亡くなりになりましたけど、この方が私を直接スカウトしたということです。

 

  突然役人にならないかと言われて、公務員試験を受けさせられました。この試験に合格しなければ役人にはなれませんので、必死の思いでやりまして、なんとか公務員試験に合格し、知事、副知事、理事の三役の一人になりました。私は4000人の部下を従えて岐阜県の理事としてさまざまな仕事をやりました。

 

 その中で実現させたプロジェクトの一つが、岐阜県の世界淡水魚水族館で、リアルとバーチャルの両方のデュアル水族館です。この水族館は今でも存在しています。またその勢いを受けて、昭和村をつくりました。その成功を見た新潟県の知事が私をスカウトして、今度は新潟県で大型太陽光発電所をやり成功しました

 

 今日お話しするのは「MCAのユニバーサルスタジオツアー」というプロジェクトで手掛けた内容をご説明します。時間の関係もありますので、今日は<前半部>だけをお話しし、<後半部>は次回でお話します。

 

 「ユニバーサルスタジオツアー」については、現在のUSJとして、大阪で開園されたのは2001年だと記憶してますが、その10数年前に「MCAユニバーサルスタジオプロジェクト」として、新日鉄が手がけていた訳です。この話は一部の人しか知らない事であり、ほとんど知られていません。

 

  MCAの社長シャインパーク氏は、その後私が何度もお会いすることになった方ですが、黒沢監督に「ユニバーサルスタジオツアーを日本で作りたい。あなたの力で紹介と仲介をお願いできますか?」と提案しました。これが後に新日鉄との繋がりとなるきっかけでした。

 

 黒沢さんが最初にアプローチした相手は東急電鉄でしたが、東急電鉄は断りました。彼は困り果て、最後の手段として三井物産の紹介で選んだのが新日鉄だったのです。そして新日鉄は、黒沢さんの提案を受け入れ、1987年に排他的契約をMCA社と締結し、このプロジェクトを進めることになりました。大阪のUSJ開園の14年前のことでした。

 

 当時は鉄鋼不況下にあり、世界的に景気が低迷していた時期でした。この状況を打開するために、新たな事業に取り組む必要がありました。そうした中で、このプロジェクトには土地が必要であり、新日鉄は君津市に約30万坪の土地を所有していましたので、その土地を有効活用できることから、このプロジェクトを進めることになりました。

 

 私はある日、社長に呼び出され、「川勝君、このプロジェクトの総括責任者になってくれ」と言われました。その時に黒沢明さんにもお会いしました。この出来事をきっかけに、私の人生は大きく変わりました。

 

 新日鉄はこのプロジェクトのために特別チームを編成し、2年近くにわたって「事業採算性があるか」を検討しました。私たちは成功することを立証し、社長に実施を提案しました。しかし、諸般の事情からプロジェクトは中止となりました。その中止の理由については、諸般の事情から申し上げられません。

 

 このユニバーサルスタジオツアーというプロジェクトへの総投資額(開園後の追加投資を含め)は当時1,800億円となる予定でした。この提案を行った際、私は新日鉄の社長に対してもう一つ大胆な提案をしました。それは、「新都市開発」というコンセプトのもと、ユニバーサルスタジオを中心とした新しい都市を創造するという提案でした。そしてエンターテインメント事業を展開することを構想しました。

 

 もし実現していたら、現在のICTや映像技術を活用したエンタテインメント都市空間の実現が可能だったと思います。

 現在、ディズニーランドは浦安にありますが、個別のテーマパークとしてのみ存在しているというのは実にもったいないと思います。ディズニーランドを中心とした新たな日本版ハリウッドのような都市を作れば、日本の発展がより一層進むと考えています。

 

 私自身が提案し、君津に建設予定だったユニバーサルスタジオツアーを堺に変更するよう会社に働きかけました。これには相当な努力が必要でしたが、なんとか相手方のトップに認めてもらいました。実は堺製鉄所の隣には広大な埋立地が存在しました。そこにユニバーサルスタジオを建設し、さらに新たな都市を併設するという計画を立て、全体の投資を提案しました。この時、MCA社も興味を持ち、あらゆる映画の制作権利全てを与えるので一緒にやろうと前向きの姿勢を示していました。

 

 しかし、新日鉄の社長はこの提案を認めることはありませんでした。それから既に30年近くが経ちましたが、新日鉄は現在どのような企業になっているのかというと、かつて世界一の企業だった地位からは遠く離れ、現在は世界で5番目ぐらいの企業になってしまいました。

 

 その後、2015年にMCAユニバーサルはNBCユニバーサルに買収されました。この会社については調べれば分かると思いますが、非常に優れた企業です。

 

 大阪のカジノ統合IR計画は2029年に開業予定であり、現在進行中の計画です。この計画に関して、私はIR会社や関係者からスカウトされたことがあります。MCAユニバーサルや官僚としての経験から、開発に適任な人材として声がかかったのですが、全て断っています。

 

 その理由は、大阪のIR計画は成功しないと考えているからです。一時的には成功するかもしれませんが、その後は発展が停滞する状況に陥るでしょう。こんなものを作っててはダメです。関係者はアマチュアばかりです。エンタメテーメントのことを全く知らない連中の企画です。私はこのような場に参加することが嫌で断っています。

 

 大阪ユニバーサルには現在ハリーポッターがありますが、なぜ彼らが、大阪のカジノ統合IR契約に関与していないのか?

何か理由があると思います。

 

 MCAユニバーサルスタジオツアーの検討プロジェクトチームは、私が新日鉄/MCAの中から主要メンバーを選びました。これがプロジェクト組織図ですが、かなりの人数が関与しており、私はこのプロジェクトの総責任者として開発を始めました。

 

 この内容については、当時の新日鉄とMCA社との間で秘密保持契約が存在し、当時の関係者が現在の大阪ユニバーサル関係に多くいます。そのため、公表することには慎重さが必要ですので、重要なポイントのみを説明いたします。

 

 新日鉄とMCAの両社にとって、これは未経験のプロジェクトでした。鉄鋼会社が突如としてテーマパークを作るというのは驚くべき話です。MCAはテーマパークや映画に関する経験は持っていますが、日本での事業展開は初めての試みでした。知らない分からない者同士は集まって、このテーマパーク事業が本当に実現し成功するのかの立証責任を負わされたということです。

 

 MCAからは日本に協力するチームが来ましたが、このチームは日本語が全然しゃべれません。我々のチームは全部英語を喋るチームで、我々が面倒を見ながら、日本で事業をやる上での日本人の考え方とか風土を教えながらやるわけです。新日鉄のチームもまた、このプロジェクトを実現し成功させるための責任を負っていますので、我々は約2年間、必死に取り組みました。この過程で、苦労したことについてお話しいたします。

 

  新日鉄チームが解決すべき「重要なポイント」は下記の通りでした。 

 ■MCAは テーマパークの基本コンセプトとなる「映画」を如何なる「在り方(基本的考え方)」「やり方(具体的方法論)」で成功させてきたか? 

 ■MCA は「本テーマパーク」を如何なる「在り方(基本的考え方)」と「やり方(具体的方法論)」で成功させてきたか? 

 ■MCA は本パークを千葉県君津市の新日鉄所有地と決めたが適切か? 

 ■MCA の本パークは日本人に歓迎され、事業採算性を生むか? 

 ■MCA の本パークは、開園後、新日鉄の企業人(社長&社員)で適時&適切に運営し、事業採算性を保ち且つ事業安定性や事業発展性などを保有し続けられるか? 

 ■新日鉄 MCA 合同チームは、本 PJT の成功を如何に立証するか? 特に新日鉄チームは新日鉄社長に成功を信じさせる事が出来るか? 

 

 MCAのテーマパークは映画が基本になります。したがって映画のことが分からなければ話になりません。映画のことが分からなければエンターテイメントのことも分かりません。映画は総合産業で総合芸術です、映画に勝るエンターテイメントはありません。映画が基本です。したがって、映画をどのように制作するか、成功させるためにはどのようなアプローチが必要かを理解する必要があります。

 

 テーマパークというのは「どういう考え方」で「どういう風」にすれば成功できるのか、そのようなことはどの本にも書いてありません。日本でのテーマパークの本は学者が書いたモノばかりで、評論家的な本ばかりです。従ってこの資料に書いてあることは、全部事実に基づいて、本当にMCAから学び、彼らから直接聞き、2年間かけて苦労しながら手に入れたものです。

 

 MCAは本テーマパークを当初、千葉県君津市に作ると決めていたわけです。なぜ君津かというと、ハリウッドに気候が似てるからというんです。それほど彼らは千葉を気に入っていました。

 

 しかし私は本当に君津でいいのかと悩みました。そして君津じゃダメだ、堺に作った方がいいと言い出しました。MCAの連中は大反対、新日鉄の社長からは怒られました。そういうことでいよいよ私は本当に首をかけて、君津じゃなくて堺につくべきだということで秘密裏に検討しました。そして最終的には堺の地につくるべきということを認めさせました。その場所は、現在のハリポタのある大阪USJのところからは南に15キロぐらいしか離れてません。大阪USJは、本当に近場に作られたという事です。

 

 次にテーマパークは日本人に受け入れられるかどうかです。受け入れられなかったら事業開園はできませんし、開業後にちゃんと運営できるかという問題もあります。それからこのプロジェクトが成功すると立証ができるか、社長を説得できるか、信用させることができるか、こういう課題も検討が必要でした。

 

 最初に最も重要なことからご説明します。

 そもそも映画というのはどうやって成功させるのかということです。これについて、私はMCAのシャインバーク社長に質問しました。「映画を成功させる秘策の中の秘策を教えてほしい」と迫ったんです。表面的なことではなく、本質的に、これがなかったら絶対に成功しないというやり方を教えてほしいと迫ったんです。彼の穏やかな表情が引き締まり、「新日鉄さんは弊社のパートナーですので川勝さんならお教えしましょう、それは”ポートフォリオ”です」と言ったんです。

 

 意味が分からなかった私はちょっと戸惑ったのですが、必死に考えました。そしたらハッと思いついたんです。正しいかどうかを確かめるために恐る恐る答えました。「それは様々な分野の映画を数多く制作して、組み合わせて、数年間でヒット映画を生み出すという、確率的な考え方ですね」と。その瞬間、彼は実に嬉しそうな表情を浮かべて「イエスサー!」と敬語を使って、はるか年下の私の主張を認めてくれました。

 

 実はこれがポートフォリオの考えなんですが、本当に嬉しかったです。この時そばにいた人たちが、ポートフォリオとは何のことか分からずポカンとしていて、それを見て私と社長は大笑いしたものです。映画会社の社長がいきなりポートフォリオというので戸惑ったんですが、私は新日鉄時代のニューヨーク駐在員の頃に、ウォールストリートに出入りして金融関係も扱っていましたので、実はポートフォリオを知っていました。

 

 ユニバーサルでは年間30本ぐらいの映画を作ります。それを4〜5年かけて、相当の投資をします。その中から1本とか2本がヒットすれば良いというビジネスです。こういうポートフォリオの考え方で映画を作らないと、映画ビジネスを成功させることできません。これが基本的な考え方です。そういう意味で、今の日本の映画会社は、実は映画会社ではありません。映画をたまたま作っているだけの会社です。本当の映画会社でしたら、ポートフォリオの考え方で、年間何十本も制作します。

 

 私は新日鉄をやめてセガに移った時に、セガでもポートフォリオのやり方をしてませんでした。それで社長に対して、こんなゲームの作り方をやっていたらダメだと言って、ゲームの作り方をポートフォリオ式に変えて貰いました。ゲームにはいろんな種類のゲームがあり、当たるか当たらないか分かりませんから、ある一定の年月をかけて、その中で大当たりを狙うような作戦、映画を作るようなやり方を導入して貰いました。

 

 日本の映画会社は、無策に映画作ってるだけです。要するに数年かけて大ヒットを作り上げるという、そういう経営戦略があるかどうか、そういう会社こそが映画会社です。今映画会社と言えるのは、インドと中国の会社です。そのような会社はアメリカと同じようにポートフォリオの考え方をやっています。

 

 金融商品を買ったり投資したりして、ポートフォリオの考え方は金融関係の仕事のやり方だと言われますが、それが最終的にはポートフォリオマネジメントまで発展していったということです。

 

 ポートフォリオ・マネジメントというのは、エンタテイメント・ポートフォリオ・オフィスという考え方です。プログラムマネジメントとプロジェクトマネジメントと言っているのはPMAJですが、しかしPMAJでもポートフォリオマネジメントとは言ってませんよね。しっかりしてくださいという感じですが、ポートフォリオの重要な位置付けがここにあるということをご理解いただきたいと思います。夢工学は実はこういうものを全部含めた考え方です。

 

 今申し上げたように、映画を成功させるための「あり方(基本的な考え方)」として「確率論」でやっているということです。従ってそれには、それなりの投資をしっかりやらなきゃいけない、でなければ成功しない、これが基本にあるものの考え方です。これは何も映画のことばかりじゃなくて、全てのビジネスの基本です。他の仕事でも全部そうで、ポートフォリオの考え方でやるべきだということです。これは経営論としても使える考え方として、是非とも参考にして頂きたいと思います。

 

 次は「具体的にどうやって映画を成功させるかのやり方」について説明します。

 

 (映画成功のやり方その1:リチャード・エドランドの Fantasy & Reality )  

 リチャードエドランはご存知ないかもしれませんが、特撮映画では大変有名な方です。彼がアカデミー賞受賞したモノから言いますと、スターウォーズ、レーダーズ、失われたアーク、ポルタートガイストはノミネート、スターウォーズのジェダイの復讐、ゴーストバスターズ、2010年、ポルタガイスト2 ダイハード、エイリアン3、ポルターガイスト2、とにかくリチャードエドランさんは特撮の世界的な権威です。

 

 エドランさんに私はあることを聞きました。

 「どうやったら映画を成功させるんですか、その秘密を教えてくれ」と言ったんです。そしたら彼が酔った勢いで面白いこと言いました。それは「ファンタジーとリアリティを両方とも実現することだ」と。

 

 どういうことかというと、映画はそもそも「空想です、フィクションです、ファンタジーです」ですが、それに「リアリティがなきゃダメだ、これは絶対だ」と。ファンタジーにリアリティがないと、そのファンタジーはお伽噺になっちゃいます。リアリティだけ追求しファンタジーが無いと記録映画になって面白くない。これを同時に、同質に、両方とも実現していくべきと彼は言いました。

 

 そういう点で考えると、今の日本のテレビでも映画でも、日本映画はつまらない。リアリティばかりでファンタジーが無かったり、あるいはファンタジーばかりだといった具合で、要するに「ファンタジーとリアリティが両方とも必要」ということです。

 

 エンターテインメントの新都市を作るなら、このメタバースとリアルバースの両方のデュアルバースを一緒にするとすごいことができると思います。NBCユニバーサルスタジオツアーも、何故、メタバースをつけた新都市の開発というのを構想しないのかな?と思います。

 

 ファンタジーとリアリティの考え方は、エドランがやったものですが、私はそれを夢工学に取り入れています。具体的には、ファンタジーの機能(F機能)とリアリティの機能(R機能)を組み合わせることで、夢を実現する方法として採用しています。

 

 デック思考という発想法の中で、重要な「発想阻害排除法」を構築する時、固定概念や先入観が発想を妨げる要素であることに気付きました。これらの固定概念や先入観を打破するために、ファンタジーとリアリティの機能(F機能とR機能)を使用することによって、新しい発想が生まれることを見つけました。

 

 このF機能とR機能は、科学、工学、事業などの分野でも極めて重要です。科学技術においても、現実世界を反映したリアリティに基づいて技術開発を行うことは重要ですが、同時に、想像力や創造性を発揮して、新しい技術や製品を生み出すことも重要です。ビジネスにおいても、現実世界におけるニーズや課題を理解することは重要ですが、同時に、想像力や創造性を発揮して、新しいビジネスモデルや製品を生み出すことも重要です。

 

 例えばゴジラという映画は、日本映画ではファンタジー要素が強く、子供向けの映画になってしまいましたが、米国の映画ではリアルティ要素が強く恐怖映画となってしまいました。リアリティとファンタジーの両方の要素をバランスよく取り入れることで、より良い結果を得ることができるのです。

 

 (映画成功のやり方その2:黒沢明監督の Fantasy & Reality )  

 黒沢明さんが実はユニバーサルスタジオツアーを日本に持ち込んできた人物であることを知ってる人はほとんどいませんが、私はユニバーサルスタジオツアーと共に黒沢さんからもいろんなことを教わりました。 

 

 映画の作り方はもちろん、徹底的に黒沢さんにへばりついていろんなことを彼に質問し教えてもらいました。黒沢さんは川勝に対しては大変気を使ってくれて何でも私の質問に答えてくれました。黒沢さんの映画、椿三十郎、7人の侍、影武者、用心棒などで、私は最もファンタジーとリアリティが富んでいて、最高傑作は椿三十郎だと見ています。

 

 椿三十郎という映画の中で何をリアリティで使ったかということをご説明します。黒沢さんは世界で初めてある音を使ってある撮影を行いました。ある音とは何かというと、実は豚肉を切って人を切った音を表現したんです。この映画で聞いた時身震いしました。リアリティそのものじゃないですか。彼は黙って黙々と映画のファンタジーの世界にリアリティの世界を同時に発揮しました。黒沢さんという方は、一方では大変ファンタジーの面白さを追求し、同時に素晴らしいリアリティも追求していた人物です。

 

 (映画成功のやり方その3:本物の夢 ✕ 優れた発想 ✕ 優れた発汗) 

 映画ロッキーの1作目の逸話もいろいろありますが、この映画を作る時にロッキー(スターローン)はとにかく貧乏そのものでした。スタローンは俳優もやっていますけども、基本的には脚本家で、書くのが彼の才能です。撮影のためのお金が無く、ボクシングの場面を撮影する時に、聴衆(観客役)を集められませんでした。そこで、フライドチキンやるからと広告を出して人を集めるのですが、食べたらみんな直ぐに帰ってしまうのが問題でした。そこで「逆撮影」というアイディアを思いつきました。最後の盛り上がる場面は、一番人が集まったときに撮影し、どんどんお客さんが少なくなっていくのを見ながら、最初の画面に戻って撮影するという方法です。こういうアイデアで、苦労しながら完成させました。

 

 私が「夢工学」でも申し上げている「優れた発想(アイディア)」という事例です。何を言いたいかというと、アイデアが無ければダメ、それからアイディアだけでもダメで、絶対作りたいという意欲と行動が不可欠です。「本物の夢」を持つということと、「優れた発想」「優れた発汗」を伴うことで作り上げたということです。このような努力の結晶が映画作りには必要です。

 

 (映画成功のやり方その4:原作 ✕ 脚本 ✕ ストリーボード)  

映画撮影において、もう一つ重要な要素があります。それは原作、脚本、およびストーリーボードの組み合わせです。これらの要素が組み合わされることで、映画は成功します。俳優や他の要素も重要ですが、それらは後の段階で扱われます。基本的には原作、脚本、ストーリーボードの3つで基盤が作られるのです。

 

 原作は重要ですが、映画化するためには脚本が作られます。脚本作成に加えて、アメリカではストーリーボードも作られます。ストーリーボードは紙芝居のようなもので、実は分厚い画集になります。1つの映画では、5000枚程度の紙芝居が使用されることもあります。これで画面ごとに、どのように撮影するかが決まります。また、画面ごとに予算を割り当てることもできます。似たような画面はまとめて撮影されて、扱われるため、非常にやりやすく効率的な方法となるのです。

 

 このストーリーボードという画集は、映画制作計画書そのものです。しかし、日本の映画会社では一般的には行われていません。先ほどの黒沢さんは、実際に多くのストーリーボードのコンテンツを作成されていました。黒沢さんはハリウッド式の映画制作手法を取り入れている方であり、さすがと言えます。私もETのストーリーボードを見たことがありますが、非常に詳細に書かれています。これを基に映画が完成されるのです。このようなプロセスを通じて映画作りが行われます。

 

 

 <参加者:ディスカッション(前半)>

 ・先ほどポートフォリオという話が出ましたけれども、それがP2Mに取り込まれていないという指摘をよく耳にします。日本企業にそのポートフォリオ概念が無いのは何故でしょうか?

 

 ⇒ポートフォリオ概念が日本企業に十分に取り入れられていない理由は、以下のような要因が考えられます。

 1.経営者の知識不足

 日本の経営者の中には、ポートフォリオマネジメントについての知識が不足しています。経営者がポートフォリオマネジメントの重要性やメリットを理解していないため、その概念を組織に取り入れることを難しくしています。

 

 2.教育体制の不備

 日本の大学やビジネススクールのカリキュラムにおいて、ポートフォリオマネジメントやプロジェクトマネジメントに関する教育が不十分です。経営学者や経済学者も、ポートフォリオについての議論を行っていません。その結果、経営者やビジネスリーダーがポートフォリオの概念に触れる機会が限られています。

 

 3.日本の企業風土の特徴

 日本の企業文化は、長期的な視点や継続的な成長を重視する傾向があります。このため、企業が多くの異なるプロジェクトを同時に管理する必要性を感じていません。そのため、ポートフォリオマネジメントの重要性が認識されず導入が進みません。

 

 以上の要因が組み合わさって、日本企業においてポートフォリオマネジメントの概念が浸透していない状況が生まれました。しかし、近年ではグローバルな競争環境の変化や技術の進歩により、日本企業もより効果的なプロジェクト管理手法を求めるようになっています。このような状況下で、ポートフォリオマネジメントの重要性が再評価され、導入が進む可能性があります。「夢工学/DEC思考」には、プログラムマネジメントとプロジェクトマネジメントとポートフォリオマネジメントの全てが入ってます。

 

 ・大阪のIR(Integrated Resort:統合型リゾート)は多分うまくいかない、失敗するといわれましたが、結局、箱物で終わってしまうという意味でしょうか?

 

  ⇒結局、そのIRプロジェクトはエンターテイメント要素が不足しており、実質的にはただの建物造りとして終わってしまう可能性があるということです。例えば、セガや任天堂などのようなエンターテイメント企業が関与していれば、違った結果になるかもしれません。

 

 ・大阪のIRは失敗するぞという話もありましたが、川勝さんご自身も当初は素人だったわけじゃないですか。それにもかかわらず、ここまで構想にその本質を組み込んだところがすごいなと思った次第です。そこが一番のポイントかなと思いました。最初に構想を立てた段階での課題とやりながら出てきた課題があると思いますが、その見極め方がすごくポイントをついた課題設定だなというふうに感じました。

 

 ⇒正しく言いますと、ユニバーサルスタジオは、ハリウッドとフロリダにあるやつを、日本に持ってくるというのが基本ですから、全く新しいテーマパークを作るということではないです。

 

 最終的にはこのプロジェクトの成功を証明しなければなりません。そのためには、このテーマパークの基盤となるのは映画であるため、映画の知識を持たずにこのプロジェクトを進めることはできません。MCAの社長からも、まず映画について学ぶように指示されましたので、映画製作の勉強を始めることになりました。

 

 この中で最も重要なポイントは、最上位の映画がどのようなものであるかです。つまり、映画の本質や要素を理解することが不可欠でした。この理解がなければ、テーマパークの構築やプロジェクトの成功には繋がらないと言えます。

 

 次に君津が候補地として選ばれていましたが、東京湾を横断する道路がなく、鉄道も繋がっていないことが問題であると気づきました。さらに、東京ディズニーランドの横にディズニーシーが作られ、第二ディズニーランドの計画もあることから、お客さんが君津まで足を運んでユニバーサルを見に来てくれるか懸念を抱いていました。千葉から君津までの高速道路もなく、お客さんがディズニーランドを通り越して、ユニバーサルを見に来るとは考えにくいと判断しました。私はこの大きな課題に取り組む必要があると感じ、それに取り組むことにしました。

 

 ・いくつかのプロジェクトの事例に基づいて「夢工学」のポイントとなる要素は何か、それぞれの事例の中で共通の要素が存在すると思います。プロジェクトを進める際に欠かせない考え方やアプローチが何か、それについてのイメージがあれば教えて下さい。

 

 ⇒成功するための方法として、映画という観点からの説明を行い、その次にテーマパークの成功要素について説明しました。成功したプロジェクトと失敗したプロジェクトの事例(ユニバーサルスタジオ、水族館、昭和村、太陽光発電所)を取り上げながら、成功のためには3つの要素が必要だと述べました。。

 

   本物の夢を持つこと:実現したいイメージや本物の夢を持つことが重要です。

   優れた発想を持つこと:新しいアイデアや問題解決の方法を考える能力が必要です。

   優れた行動を起こすこと:夢やアイデアだけではなく、行動を伴うことが重要です。

 

 これらの要素は成功するための基本的な条件であり、これらを持って実際に5つのプロジェクトを実現してきた経験から、今も経営コンサルタントとして指導に活かしています。

 

 ・ファンタジーとリアリティのバランスが成功のポイントだというところが印象に残っています。そのファンタジーが夢につながって「夢工学」になったのではないかと受け止めています。日本のビジネスではいろんな面で、リアリティ優先で、ファンタジー(夢)の要素が少ないと感じます。これからは夢でもいいんですけども、ファンタジーの要素を盛り込んだビジネスプラン、映画みたいな壮大な仕事、を創っていくことが大事と受け止めをした。

 ⇒理論的にことを進めていくと共に、もう一つは楽しく盛り上げていく、そういう両方だと思いますね

 

 ・楽しく聞かせていただきました。やっぱり開発はストーリーなんだと思いました。最近はどういう方向で考えているか、その方向性の見えない時代になっているように感じます。そこら辺をどう考えていくか、ポートフォリオというのも一つの考え方だと思います。どこかでリスクヘッジして、大規模のプロジェクトができた、ハッピーな話だなというふうに思いました。そういう将来に向けた新しいテーマ作りを自分もやっていきたいと思いました。

 

 ・アニメーション、漫画、ゲームなど、日本が得意なファンタジー作品がある一方で、統合型リゾート(IR)やテーマパークがうまくいかないのは、どこに違いがあるのか気になっています。私はアニメは映画に近い作り方をしていると思うのですが、如何でしょうか?

 

 ⇒同じだと思います。アニメはもともと漫画を基にしており、絵を描くことが得意な人々が関わっています。アニメーション制作は、ストーリーボード(絵コンテ)と呼ばれる画面ごとの情報を基に進められます。実際にこれを動かすと、アニメーション映画になります。

 

 アニメーションの場合、実際の撮影が必要ないため、予算的にも安く制作することができます。この点で効率的に取り組むことができるため、日本ではアニメ制作が盛んです。アニメの制作プロセスでも、原作、シナリオ、ストーリーボードが重要な役割を果たします。これらの要素が組み合わさることで、アニメ作品が完成します。一方、映画の場合は実写ですので、撮影や演技の要素も加わりますが、基本的な構成やストーリーボードの考え方は共通しています。

 

 アニメと映画は異なる表現形式ではありますが、ストーリーボードやクリエイティブな要素など、基本的な制作プロセスは共通しています。この点において、日本の得意なアニメーション制作の要素が、他の分野にも応用できると思います。

 

 ・ポートフォリオにおいて、アニメ制作におけるストーリーボードの作成というプロセスや段階を踏むことで、映画制作と似た展開に持っていけるかなと感じました。

 ⇒誤解があるかもしれませんので説明いたします。アニメの場合も、様々な種類のアニメを作成し、それらをポートフォリオとして提供するということは、一つの映画に複数のポートフォリオを詰め込むわけではありませんので、誤解のないようにお願いいたします。

 

 冒険ものや社会もの、恐怖ものなど、さまざまなジャンルのアニメを、100本または200本といった数を制作し、それらを数年かけて適な収益構造に最適化するというのが、ポートフォリオの考え方です。

 

 ・ストーリーボードの話がありましたが、PMにアニメ制作のノウハウを持ち込むことで、魅力的な表現が可能なストーリーボードを取り込むことができるかもしれません。日本ではアニメが強い影響力を持っているので、アニメ制作の要素を活用してストーリーボードを作成することで、PMの改革が可能になるのではないかと感じました。

 

 ⇒PMにこのような考え方を持ち込むことは良いアイデアだと思います。ただし、一般的にはまだ浸透していないかもしれません。工学の視点を取り入れることも可能であり、PMのプロセスやステップにストーリーボードを組み込むことでプロジェクトの理解がより容易になるでしょう。絵は完璧である必要はありませんので、絵心のある人であれば、プロジェクトマネジャーでも絵を描くことができるでしょう。特にソフトウェアのマネジメントやIR、建築、製品開発など、論理的な進行が必要な分野では、映画制作のような取り組みが行われていると思います。ゲーム開発などでは既にそのような試みが見られます。

 

 

 <川勝さん:講話(後半)>

MCAはテーマパークをいかなる「在り方とやり方」で成功させたかという「成功の法則」についてご説明します。

 

 世界初のテーマパークはディズニーランドではありません。これはウォルトディズニー自身が言っていることですが「私がテーマパークを思いついた訳ではない」と言っています。いつも遊びに行っていた「ベリーファーム」という遊園地で、新しいテーマパークの発想を考えついたと言っています。でもやはり、ディズニーが本物のテーマパークを作ったと言えると思います。日本でのテーマパークはやっぱり「東京ディズニーランド」ということは間違いないと思います。

 

 日本では失敗したテーマパークが数多くありますけど、この失敗に関してはいろんな要因があります。まず日本の政治家とか学者がバブル時代に、地方活性化としてテーマパークをやればいいと主張し、みんなやりだしました。

 

  私は岐阜県の理事をやっていましたけど、知事から昭和村を作ってくれということでやりました。皆さんご存じないと思いますが、実は岐阜県には大正村があるんです。愛知県名古屋には明治村があるんです。昭和村はテーマパークではないんですけど、このバブルの時代に日本全国にテーマパークができましたからやりました。もう何でもかんでもテーマパークでした。

 

 1980年代に日本では、多くのテーマパークがオープンしましたが、そのうちのほとんどが失敗しました。そのため、一部の学者やジャーナリストは、テーマパーク事業は失敗に終わると主張しました。偽物のテーマパークが破綻したから、テーマパーク事業はダメだというのはちょっと筋違いじゃないかというのが私の意見です。その中でも東京ディズニーランド、東京ディズニーシー、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、ジョイポリスは成功を収めました。

 

 ジョイポリスは、1981年に横浜でオープンした日本初の屋内型テーマパークです。当初は「ジョイポリス」と「ガルボ」の2つの名称候補が挙がりましたが、最終的に「ジョイポリス」に決定しました。ジョイポリスは、オープン当初から大成功を収め、日本全国に展開されました。最高集客率はユニバーサル・スタジオ・ジャパンの7割に達し、日本を代表するテーマパークの1つとなりました。

 

 ジョイポリスの成功は、テーマパーク事業が成功する可能性を示しています。しかし、成功するためには、コンテンツの充実やマーケティング戦略など、さまざまな要素が重要です。テーマパークとは、単にアトラクションやイベントが集まった場所ではなく、ストーリー性や世界観を体験できる場所だといえます。ジョイポリスは、そのストーリー性や世界観を体験できる本物のテーマパークであり、今後も多くの人々に愛され続けるでしょう。

 

  新日鉄プロジェクトは中止になりましたが、10年後に大阪市がUSJを開園してくれましたので、非常に嬉しく思いました。実は新日鉄が辞めた後に、大阪市の佐々木助役さんがMCAにアプローチしました。MCAはこれ幸いと大阪市と組んだわけです。しかし大阪市としては、ほんとに成功するか?ということが最大の課題でした。

 

  ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの建設地を大阪に決めたのは、新日鉄の私達のグループです。2000年頃に約2年間にわたって調査を行い、君津ではなく大阪に建設した方が成功すると考えました。大阪にした理由は、新日鉄の製鉄所跡地に30万坪の埋め立て地があったからです。この土地を活用すれば、すぐにユニバーサルを建設することができます。大阪は観光客が集まりやすいという利点もあります。さらに、当時の大阪市の関係者は、内々でユニバーサルの建設に積極的であり、土地の提供やインフラ整備など、様々な支援を約束してくれていました。このような理由から、私達のグループはユニバーサル・スタジオ・ジャパンを大阪に建設することを決定しました。

 

 その後セガを経て岐阜県の役人になりました。これは知事から直接スカウトされて公務員試験を受けさせられて役人になったんですけど、給料は半分になりました。天下りした人は給料が倍になるんですけど、私は天上がりしたので給料が半分以下になりました。バカみたいな話です。カミさんからあなたはセガでリストラにあったみたいといつもからかわれました。

 

関西の出張の途中に大阪市の市長と助役に表敬訪問しました。表敬訪問は建前で、ユニバーサルは一体どうなっているかを聞きに行った訳です。

 

 その時に私は彼らに対して、ユニバーサルは絶対成功する、川勝を信用して間違いない。立地も大阪で大丈夫だ、徹底的に調べた結果、東京じゃなくて大阪がむしろ適している、東京でやったらディズニーは負けてしまう。それから世論の反対を押し切ってもいいから、こういう大きなテーマパークを実現することは、地方活性化の大きな糸口になる。何としても、大阪市民のためにも、関西全体のためにもやるべきだということを口酸っぱく言いました。市長も助役も「その通りだ」と喜んでくれました。

 

 新日鉄が中止したプロジェクトを、なぜ大阪市がやるのかということで批判されていた時期でした。特に助役の佐々木さんは四面楚歌で、非常に辛いということを漏らされていました。私がユニバーサルやっていた時も、周りに味方はいなく、足を引っ張られ、辛かったので、その気持ちはよく分かりました。そこで「貴方が非常に苦労されていることはよく分かるから頑張ってくれ」と励ましました。佐々木さんは私が帰る時に市役所の玄関まで見送ってくれて、私の手を握って「成功させます」と誓ったんです。この時のことを今でも覚えています。彼は決意通り成功させたということです。

 

大きな問題は、このUSJプロジェクトが成功するかどうかと立地が大阪で大丈夫かという2点でした。この2つの問題について、私は2年近くかけて調査を行い、既に結論を出していました。そして、MCAもこの結論に同意していました。つまり、大阪で成功することが明らかであったにも拘わらず、新日鉄はプロジェクトを中止してしまったという訳です。

 

 最終的に、大阪のUSJプロジェクトは佐々木さん達によって成功裏に実現されました。その裏で、実際にプロジェクトが成功するかどうか、大阪での立地が適切であるかどうかを証明していたのは、私と私の部下でした。そのため、私は今でも、大阪のハリーポッター プロジェクトを実現させたのは、影の功労者は、私と私の部下であったと考えています。そして、大阪での成功は、私の推論が正しかったということの証明で、非常に嬉しく思っています。

 

 何れにしても、偽物のテーマパークは遅かれ早かれ廃れてしまいます。追加投資を行わなかったために失敗したとか言われていますが、それらは本来のテーマパークではありませんでした。普通の遊園地、公園、博物館、歴史館、スポーツ施設などであり、偽物のテーマパークを作って、生産性の低いものにいろんな要素を付け加え、無駄な資金を投下したということです。したがって、潰れるのも当然です。

 

 本物のエンターテイメントとはどういうことか、基本的なところを理解していないからです。テーマ性を入れてテーマパークと言っても、真のテーマパークではありません。私は都市開発の基本はエンターテイメントにあると考えています。地方開発においても同様です。岐阜県の役人時代に、この考えを役所の職員に理解させるために努力しました。知事はすぐに理解してくれましたが、部局長に理解させるのに大変苦労しました。この考えを理解し、都市開発に活かされることを願っています。

 

 テーマパークに限らず、会社の業務においても同じことが言えます。問題の本質を見抜かず、または誤解から生じる失敗は多く存在します。本物のテーマパークだけでなく、本物の事業プロジェクトを立ち上げることが成功の鍵です。これが非常に重要です。先ほどのポートフォリオやプログラムやプロジェクトを適切に適用すれば、本物の事業プロジェクトを立ち上げることは可能です。本当のテーマパークか、偽物か、ヒットの法則は何か、成功の条件は何か、失敗を回避するためにはどのような手段を取るべきか、これらの点をしっかりと考え見極めることがプロジェクトの成功につながると言えます。

 

 

 <参加者:ディスカッション(後半)>

 ・破綻したテーマパークがリストアップされていますが、何が共通でこういう失敗になっているんですか?

 

 ⇒テーマパークが潰れてしまう理由はいくつかありますが、その中でも一番大きな理由は「更新できない」ということです。テーマパークのコンテンツはエンターテインメントが中心であり、数年で飽きられてしまいます。ディズニーランドはディズニー映画会社が運営しているため、白雪姫やシンデレラなどの永遠のテーマは維持しつつ、常に新しくコンテンツは開発し更新し続けています。

 

 潰れたテーマパークでは、この更新できるコンテンツを作ることができませんでした。入れ替えが効かないため、すぐに飽きられ、潰れてしまったのです。ジョイポリスはゲームを主体としたテーマパークであり、自らがゲームを作っていますから、常に新しいコンテンツを提供しています。そのため、飽きさせず、本物のテーマパークとして成功しているのです。 テーマパークを成功させるためには、常に新しいコンテンツを開発し、来場者を飽きさせないことが重要です。

 

 ・自動車産業振興プロジェクトを推進しています。小さな部品ですがキーとなる部品や動く車のことをよく知っていますので、その辺でアイディアをひねって必須の部品を見つけようとやってます。今のテーマパークの話で、破綻したテーマパークとかはいろいろ参考になるんですが、ガラッと話題を変えて印象に残るテーマパークとして、東武ワールドスクエアという「ミニチュアの街」があります。あれはディズニーランドと同じぐらい何回でも行きたいなと思います。ヨーロッパでもいろんな国でミニチュアの街を作るというのが展開されてると思うんです。オランダなんかにもあって、中身はそんなに変わってなくても、ああいうのは何かほのぼのとして、そこら辺はどうでしょうか? 

 

 ⇒それは私の言うテーマパークではなくて、博物館みたいなものですよね。博物館ですから、博物館として成功する方法をやるべきだと思います。それに相応しい「道を極めて」やっていけば、必ず成功すると思います。テーマパークというのは、そのテーマ名が名前の由来なんです。そういうキャラクターもストーリーもないのに、勝手に寄せ集めでやったら失敗するに決まっています。 飽きられたらどうするかということも確保して経営をやっていたら無理なことしなかったと思います。

 

 ・「エンターテイメント」という言葉をどう定義されているんですか?

 ⇒一番簡単な答え方は、ホスピタリティ(hospitality)というのはホスト・ホステスがお客さんを片方向でモテナスエンターテイメント(entertainment)双方向でもてなす、双方向で盛り上げていく」という違いです。目的は基本的には似てますが、楽しいことをお互いが愉快になるようにやる。基本的には、お互いが感動感激するような場を用意して作り上げるということがエンターテインメントの本質です。

 

 日本の場合はエンターテイメントというと「接待」する、ホストとかホステスとか芸者さんが「もてなし」ていることに取られるが、アメリカの場合はエンターテイメントは「芸を通じてお互いに楽しく、観客も参加して、双方向で楽しむ状態になる」ことです。だからスポーツの世界、プロスポーツ世界もエンターテインメントの対象になります

 

 ・本当にエンターテイメントの本質を掴んでおられいろんなことを考えさせられます。自己紹介では自動車の話が前面に出てしまいましたが、実際やっていることは、「地方都市で人口減少の中で安心して楽しく、例えば昭和時代のように駆け上るような雰囲気の中で、安心して子育てができ、相互に信頼関係が成り立った上で、みんなで集まって楽しくお祭りのような街づくりを実現したいと考えています。未だ全体構想が掴めていない状態ですが、成功と失敗を繰り返しながら、皆と協力しあってアイディアが練れないかと悩んでいます。非常に難しさにも直面してるわけですけど、もっと日本人の良さというか他人のことにも関心を持ちながら、ネガティブにならずプラス思考でやれないかと考えています。

 

 仕掛けはやっぱりテーマで惹きつけないといけないので、開発テーマでもいいしテーマパークでもいいし、いろんな課題を目標に設定して、そこに皆が集まって、「そうだよね!」と思わせるような活動をやろうとしています。地域で討議会みたいなものを何回も繰り返しながら、話題提供しながら、住民と一緒にやる予定です。そういうことでもう一度、日本の将来ビジョンを作り直さないと、失われた何年とか言われっぱなしでは悔しいなと思っています。

 

 若い人たちがどう思ってるかというのも、大学にいるから分かりますが、やはり一緒に考えて寄り添って欲しいという若い人の考えもありますので、そういうところも経験豊富な年配の方も沢山いるので、若い人が遠慮せずにどんどん加わって実行部隊として、ヒエラルキーじゃなくて水平分権で、世代を超えてやれればいいなと考えています。

 

 ⇒お手伝いすることがありましたら、お声がけ頂ければ何でもやります。元は役人で今は民間の仕事をしてますが、エンターテインメントは得意中の得意ですので何なりとご活用下さい。

 

・やはり首長とか行政がその気になってもらわないと進めようがないので、そこら辺の土台作りにまだ何年もかかると思います。石巻市にいますので「復興はなったというけど、じゃあ将来はどうする?」というところです。

 

 ・DXをテーマに議論しており、その中でデザイン思考とかDEC思考も当然考えなければならない項目なので、そこを勉強したいと思い参加しています。

 

 川勝さんのお話は「本質をよく語っておられる」と感じる部分が多く、やはりプロジェクトを推進していく上で大事なことはマインドだと思うんです。先ほど質問した中で共通語として3つ「本物の夢、優れた発想、優れた発汗」と言われたが、そういう本質的な考え方や知恵を、本当は現場でプロジェクトをやっている30代40代の人に伝えなければいけないと思います。その重要性を訴える「プロマネ道」というか、そういうことを伝える場があったらいいなと思っています。

 

 教える側も粘り強さが必要で、教えようという強い気持ちがないとこういうものは伝わっていかないと思うんです。PMAJとして、もっと現場で実際に悩んでるPMをどう育成するかということをやって欲しいと思います。技術やテクニックなどの知識情報は自分たちで学べるし、それぞれの分野でやればいいと思いますが、マインドや知恵といった実践的なことを教えられる人は多くはないです。

 

 理論的機械的な内容のみの指導は、何か得るモノもあるかもしれないけど、結局やってみて、結果の反省の中で分かるだけです。それじゃダメだと思います。もっと前持って、そういうノウハウやマインドを教えられるような機会を作るべきじゃないかと思って聞いてました。PMAJの会員とか若手にどういう形で伝え広げるかを考えるべきと思っています。

 

 ・私も川勝さんのお話は、何度聞いても飽きないしエンターテイメント性があるなと思って聞いています。「本物の夢」とおっしゃいますけれども、プラス川勝さんのお話には「本物の経験」が一体になっているから面白いんだと思っています。

 

 ファンタジーとリアリティのバランスの取れたプロジェクトマネジメントというのが「夢工学」かなと理解しました。日本人はもっとファンタジーを追求して、夢にして、PMに持ち込むようなことをやっていく必要があると感じました。この夢工学サロンをそういう活動のメッカにしていけたらいいなと期待をしていますので、今後ともよろしくお願いいたします。